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7・不遇なゴーレム使い

 やれやれと思いながら、俺は眠たい頭をそのままに、斫り師の修理に必要な素材を購入しようと街へ出る。


「はぁ?おいおい、お前さん、何体ゴーレム作る気だ?」


 ゴーレム鋼を買いに寄った鍛冶屋で、ミスリルを代金代わりに見せたらそんな事を言われ、手元を見てみる。


「ああ、腕だけ直せれば良いんだ、そんなには要らん」


 拳大にもならないならないミスリル塊なのに何を言ってるんだ?と疑問に思う。


「いやいや。お前、寝ぼけてんのか?そいつは魔性ミスリルだろ。ゴーレム鋼なら数百キロ分になるぜ。普通のミスリルでもゴーレム一体じゃ余るだろうよ」


 そう言われ、自分が差し出したモノが魔性ミスリルだと思い出す。ああ、相当に寝ぼけてんなぁ~


「ああ、悪い。こん位だな」


 手にあったミスリルをさらに分け、必要分を差し出した。


「おう!何だったらその魔性ミスリル分、道具を作ってやっても良いが?」


 なかなか気の良いドワーフなのだが、生憎と今は時間がない。


「いや、ちょっと急ぎなんだよ。昨日、ゴーレムを壊しちまってな」


「そいつは仕方ねぇ、ほら」


 ズシリと手に来るゴーレム鋼を受け取り、行李へと仕舞う。


 そのまま戻って斫り師の修理を行った。もはや自分が何をやっているのか、感覚だけで作業をしていて、きっと後から思い出せないだろうなぁ~などと、そこだけは冷静に頭が働いていた。


「おっし、出来た」


 とりあえず動かしてみる。


「うん、ま、これで帰る分には大丈夫だろ。寝よ」


 

 起きると体が痛かった。


「体が痛い・・・」


 そして気が付く、作って装着して、そのまま鍛冶屋へ行って、斫り師の修復をやっていたのだと。


 何の違和感もなくやっていた。


 いや、寝ぼけていて気にしていなかったというべきだろうか。


 だが、斫り師を修理して試運転をしたはずである。


「おいおい、ゴーレムって操れるのは普通、一体じゃなかったか?そもそも、俺は二体も操れない」


 自分がやったことを思い返してみて、余計に頭が混乱した。


 ゴーレムを操るというのは、自分の体ではないナニカを自由に動かす事である。それを複数同時に操るのは難しい。あまりにも思考が複雑になり過ぎるからだ。中にはそういうことが出来る者が居ない事もないが、俺にできるのは、虫型ゴーレムを飛ばすくらいだ。

 中には二体のゴーレムを動かして荷を運ぶという器用なことをやる高度なゴーレム使いも一握りは居るが、戦闘用ゴーレムでそれは不可能だ。完全に体を無防備にして複数のゴーレムを戦わせるなどあり得ない。最低限の事は自分で出来なければ、迷宮の探索について行けないからだ。


 だが、どうやら俺は、朝それをやったらしい。


 そして、試しに痛い身体を労わりながら、斫り師を動かしてみる。


 すると、普通に動くではないか。そして、自分も動いてみる。


「ふむ、いつもと変わらんな」


 操作に何の違和感もない。それが逆に気持ち悪く感じるのはなぜだろうか?


 その謎が解けないまま翌日、俺はゴーレム輸送ギルドを訪ねた。


 予想通り、マレクはそこに居た。


 例の商人の件があるから事情聴取が行われ、数日は仕事に出られないと見当を付けてみたが、当たりだった様だな。


「マレク、ちょっと話がある」


 ギルドの待合所でポツンと座る彼に声を掛けた。


 ギルドと言っても冒険者ギルドの様な酒場は無く、本当に仕事探しの場に特化しているのがゴーレム輸送ギルドである。朝ではないからか、静かで冒険者にとっては苦痛すら感じるが、場違いなのは俺なのだから仕方がない。


「ジャンさん?」


 俺が現れた事に疑問を持ったのだろう、少々警戒している。


「別に助けた分の報酬なんて話じゃねぇよ、スーツの話だ」


 そう言うと、ホッとした顔をした。冒険者をそんな守銭奴だと思ってんのか?中にはそんな奴も居るが・・・


「ジャンさんもアシストスーツに興味があるんですか?」

 

 興味があると言うか、作ってみた事をはなす


「もう作ったんですか。S級の人は違いますね」

 

 そう驚くが、ゼロから作り上げたマレクとは比較にならない


「僕もマネですよ。自分で考えた訳じゃありません」


 マレクがマネって、じゃあ、原形は誰だ?


「あ、いえ、そのものは・・・、ない・・・かな?」


 意味の解らない事を言いだした


「ま、まあ、ジャンさんの様な鎧は、僕には無理だったので、自分なりのアレンジです」


 と、なんだかはぐらかされた気がするが、それは置いておき、本題の話を切り出した。


「なるほど、ジャンさんくらいになると、ゴーレムも動かせるんですね」


 と、どこか予想外の返答をされたのだが、思い当たる節がない事も無かったりする


「はい、僕は小型のゴーレムしか作れませんから、下手に頑張ってゴーレム自体を大きくしても、動かせません」


 そう、何体も作れるゴーレム使いは、複数の操作も原理的には可能で、その逆も然り、小型ゴーレムしか作れないゴーレム使いが無理にゴーレムの図体だけデカく作り出しても、結局は満足に動かせない。

 魔法使いが、その魔法の威力を自身の持つ魔力量に依存する様に、ゴーレム使いも、ゴーレム作成や操作を自身の魔力量に依存している。

 魔力量の多いゴーレム使いならば、複数のゴーレムを作り出し、操作する事も可能。


 ゴーレム使いはその魔力量によって、作れるゴーレムの大きさや数に制限が掛かり、魔力量を超えたゴーレム作成は出来ない事が分かっている。

 なにせ、ゴーレム使いと作成したゴーレムは魔力で繋がっているのだから。


 その点、俺は同時に5体は作成可能だ。もしもの為に常備しているのは3体。いつでもさらにひとつ作れる素材を備蓄している。


 マレクは小型ゴーレム1体が限界らしい。

 そりゃ、普通なら不遇な存在になっちまうな。


「じゃあ、マレクのスーツは、それが限界か?」


「いえ、実は背負子を担ぐ補助腕は動かせるんです」


 マレクの説明によれば、どうやらスーツに必要な魔力量は普通のゴーレムより少なく済み、今まで不遇をかこって来たゴーレム使いにもスーツなら動かせ、仕事に役立つだろうとの事だった。


「アシストスーツは体を動かす感覚そのままなので、ジャンさんほどの人なら別でゴーレムを操作出来るんだと思いますよ」


 マレクの話を聞いて、なるほどと思った。それに何より、これはゴーレムに一種の革命を起こさないか?


「結局は魔力量に依存するので、戦闘については、僕にはわかりませんよ」


 最後にまたはぐらかされた気分だが、知りたかった事は知れた。


  

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