6・夢が一歩前進
酷い誤解を受けたが、どうやら誤解は解けたらしく、彼を連れて酒場へと向かった。
少年の名前はマレク、最近鉱山迷宮へやって来たばかりだという。
「僕が作れるゴーレムはこのくらいで」
と、自分の腰くらいの高さを指す。
「そんな小さなゴーレムじゃやれることも少なくて、でも、仕事がしたかったから、アシストスーツを作ってみたら、上手く機能したんです」
という。たしかに、世の中には中途半端な能力しか持たないスキル持ちなんてごまんと居る訳で、戦闘系スキルでもそう言うのは多いが、小さなゴーレムしか作れないのでは、たしかに困るだろうな。他人が作ったゴーレムを動かせるなんて術があれば良いのだが、そんなご都合主義のスキルなんて存在しない。
それでも仕事がしたかったからと、着装型ゴーレムに挑んで成功したのか。ソイツは凄いと素直に思うが、アシストスーツって、何だ?
「パワードスーツの一種ですよ。こんな外骨格を体に合わせて装着して、身体強化を魔法ではなく、外部ソースの力で行うんです。僕はゴーレム使いだから外部ソースなんかなくとも、こうやって動かせるので、成功したんです」
嬉しそうに語ってくれたが、半分も理解できねぇ
パワードスーツって、何だ?
「え?パワードスーツは・・・、あ・・・」
いきなり視線を彷徨わせだすマレク少年
「えぅと、その・・・、あ、ほら、ゴーレムを着る様な?」
いきなりものすごく適当な説明になっているが、本人もよく理解していないという事だろうか
「着装型ゴーレムなんて成功例を聞いたことが無いんだがな」
と、俺が指摘してやれば、何やら挙動不審になっている
「やっぱり、そういうのってマズいんですかね?」
と、上目遣いに聞いてくる。
中性的なショタがあざとい仕草をしやがって・・・
「マズいって訳じゃねぇな。ゴーレム使いの戦闘職にとっちゃ、一種の夢なんだよ、戦士のように自ら鎧型ゴーレムを着込んで戦うってのはな」
あくまで俺の夢だが、そう言っちゃ恥ずかしいだろ?
「なるほど。でも、成功した事が無いんですよね?」
あざとさが無くなり、今度は興味津々と言った仕草である。興味の方向が男の子らしくて勘違いしないで済みそうだ。
俺は、ノルムルに聞いた失敗例や俺の体験談を話す
「それって、こういった強化外骨格とか使ってないんですか?可動部を繋げて力を逃がしたり支えたりする構造を作らないと、体の負担が大きすぎますよね?」
そう、いたって普通の返答が帰って来るが、だったらなぜ、マレクは空間拡張を施した行李なんて背負って平然としてたんだろうか。俺が考えた様な方法で着装してるのにも関わらず
「あ、僕のアシストスーツはジャンさんのは違うんです」
あっさりとそう否定しやがった。
そして、なぜか人間の骨格構造の話を始める意味不明さ。つか、そんな詳しいとか、ゴーレム使いなのに治癒術でも習ってたのかね
「あ、いえ、これは習ったというか、知っていたんですよ。まあ、分かってしまうのだから仕方ないというか・・・」
意味不明過ぎて理解が及ばないが、マレクの纏うゴーレムの概念は、何んとなく分かった。
「体の外にもう一つの骨を身に着けてるって事か。そりゃあ、金属骨格を人の何倍もの力で動かしたら、重いモンでも確かに運べるわな。ほとんどをそのアシストスーツ?で支えてんだろ?」
そう聞けば、ハイと元気に返事が返って来る。
しかも、かなりの秘伝技術であるはずのスーツとかいうゴーレムの機能や機構を詳しく説明してくる。そんなペラペラ他人に教えて大丈夫なのかと不安になるレベルだぞ。
「いえ、別に隠すようなものではないですし、僕みたいなハズレゴーレム使いでも、ちゃんと稼げるようになれば良いかなって」
などと殊勝な事を言って来る。しかも、ゴーレム輸送ギルドを通じ、荷役に向かない小型ゴーレムしか作れない者たちを対象としたスーツ講座の設置を働きかけているという、かなりの積極性まで持っているらしい。
「そいつはまたスゲェ構想持ってんな。俺も成功を祈ってるよ。今日はおごりだ」
そう言ってジャンジャン飲ませて食わす。
「本当に、そういう趣味じゃないんですよね?」
不安そうに聞いてくるが、断じて違う。俺の夢の参考になる話を聞いたから、その礼だと言っても、まだ疑っていやがる。
程よく食って、マレクとは別れた。
そして、その夜。
「ふむ、背骨を作って腰を据え、そこから人間の足の骨を模して作っていく・・・」
マレクから聞いた事を反芻しながら、魔性ミスリルを練成し、少々平たい背骨を作り、腰の部品を作って組み合わせ、さらにそこから脚の骨を作っていく。
「肩から先は、まあ、アレとは違うアレンジが必要になるだろうし、重量物を持たないなら、今は必要ないかもな」
と考えながら、とりあえず試作品が完成した。
背骨を背負い、脚部を取り付けてみる。特にどうという事もない。
試に重量のある行李を背負ってみたが
「なるほど、外付けの骨格が重さを受け止めてくれるから、体にかかる負担が減るのか。これでもっとフィッティングを最適化してやれば、体重の何倍もの荷物を普通に持てるようになると・・・」
なかなかの発想力に舌を巻く事然り、よくこんなものを考え付いたもんだ。
動いてみれば、以前作った鎧型のように激しく動くと脚が抜けて飛んで行きそうだとか、胴の重さで脚が潰れそうといった不安に苛まれることはなかった。
「ふむ、これはちゃんと作れば使えそうだな!」
ようやく、俺の夢が一歩前進できた様で嬉しくなった。
「あ、もう朝じゃねぇか」
こっちにいる間に試運転って訳にはいかないらしい。
「斫り師の修理もあるのに、もう鉱石拾いに行く暇もねぇな、こりゃ」
明後日にはビルゼンに帰らなきゃならん、ちょっとはしゃぎ過ぎた事を後悔している。




