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5・酷い誤解を受けた

 それから数日、鉱山迷宮で鉱石拾いに精を出した。


 あれ以来、あの少年を見掛けていないが、これだけ人の出入りがあれば仕方ない。


「くそ、サビ鉄ばかり出やがって」


 今回はハズレばかりだ。


 普通の冒険者や商人であればホクホク顔なのだが、あいにくと俺が欲しいのはアイアンゴーレムの錆びだらけの鉄ではない。

 アレはギルドや商人に売るには良いが、ゴーレム錬成で使う素材としては最低限品質。鍛冶師に渡して精錬してもらわないとゴーレム錬成では使えない代物だ。なので、出来るだけ錆びていないスチールが欲しい。


「もう少し先へ行くしかないか」


 やれやれと思いながら上層を歩き、中層を目指す。


 この迷宮は中層までしか探索されていないので、採取目的でなら、普段は上層で活動するのだが、どうしても目当ての物が手に入らない場合は中層へ潜る事もある。


 当然ながら下層の存在は確認されているが、アイアンゴーレム程度しか居ない上層がC級の適正値、中層になるとミスリルゴーレムが出てきたりするので、いきなりA級相当に跳ね上がる。

 運が悪ければ魔性ミスリルゴーレムなんて化け物まで出るらしく、もはやS級の領域である。


「魔性ミスリルかぁ、アレならゴーレムには最適だろうが、中々扱いに難しいし、斫り師じゃ相手したくないなぁ」


 中層入り口まで来ると、途端に人が居なくなる。

 ここから先は採取場所ではなく、冒険を始める場所だからだ。


 中層へ降りていくと、前から人が走ってきた。徐々に近づき、その容姿がハッキリ判る様になる。

 おっさんである、まさしくそう表現するしかないおっさんがゼェゼェ言いながら走り


「ミスリルだ。ミスリルゴーレムだ」


 と、横を抜けていく。


 ミスリルゴーレムが出たら逃げるとは、一体何をしに中層へ降りたんだ?

 そう呆れながらも少々早足で進んで行けば、確かにミスリルゴーレムである。

 ついでに、案の定荷役に雇ったであろう者を置き去りにしている。


「まあ、こうなるか・・・」


 面倒だと思いながらも、見つけてしまった以上は助けない訳にもいかず、斫り師をミスリルゴーレムへと走らせる。

 ミスリルゴーレムへと近づいたならば、飛び蹴りで襲われる人影から引き離し、後から追いかる俺が声を掛ける。


「大丈夫か?」


 声を掛けた相手をよく見れば、先日の少年ではないか。


「はい、なんとか」


 まだ警戒を解かない少年は、仲間を守っていたらしく、彼の背にまだふたりほどがうずくまっていた。


「もう大丈夫だ」


 明るくそう言い、斫り師にミスリルゴーレムへと攻撃させる。

 ゴーレムはだいたいどれも魔石を胸や腹に露出させているので、それを取り出せば素材でしかなくなる。

 が、妙に動きが良いな、このミスリルゴーレム。


「あ、魔性ゴーレムか!」


 今更気付いたが、コイツは魔性ミスリルゴーレムだ。

 魔力伝導率が非常に高い素材になるが、その純度の高いミスリルは、つまりS級魔物相当になる厄介な存在である。


「あーあ、斫り師は諦めるか」


 そう落胆したなら、相手の急所探しを行う。

 魔性ミスリルゴーレムは、まるで手練れた重戦士の様に斫り師へと攻撃を行って来るが、素材が鉄の半分の重さも持たないだけに、打撃力は大した事はない。

 それでも斫り師では、剣豪の様に完全に躱すには至らず、豪傑の様に受け止める耐久力はない。


 腕が完全に壊れる前に急所を探し出し、隙をついてタガネを魔石へと打ち込む。


「止まった?」


 少年がそう呟くのを合図に魔性ミスリルゴーレムが崩れていった。


「ま、素材が手に入ったから良いか」


 斫り師は左腕を損壊し、今日はこれ以上の探索は無理そうである。

 俺は魔性ミスリルを斫り師の行李へと放り込む


「あの・・・」


 少年が声を掛けて来る。


「やらんぞ」


 おじさんと言いやがったからな、おめぇ~にやる素材はねぇ!



「あ、いえ、ミスリルは要らないです。助けていただき、ありがとうございます」


 少年がそう頭を下げてきた。口は悪いがデキたガキである。


 ミスリルを斫り師に積み込み終え、改めて少年を見る。

 背負っていたであろう行李はなく、背中にはなぜだが背骨の様なものが見えていた。

 改めて見ると、他にも肩から腰に掛けて背骨に由来するナニカが見え、腰から踵へ、肩から掌へとそこから続いているナニカを発見した。


「どうなってんだ?それ」



 何を言われたのか解らない少年が首を傾げる。


「それだよ。ウロコって訳じゃ無いんだろ?」


 そう聞けば、合点がいたらしい。


「ゴーレムですよ」


 と、さも当然の様に返してくるが、俺にはさっぱり分からん。


 どちらにしても、けが人を放って雑談に耽る訳にもいかない。

 ふたりのうち女性の方は革鎧を纏っており、冒険者らしい。もうひとりは少年と同じく荷役のゴーレム使いだろう。ゴーレムは存在しないが。


 俺も負傷者を運ぼうと言ったのだが、少年はゴーレム使いを背に担ぎ、冒険者を抱きかかえて行くと言う。


「戦えるのはあなただけですから」


 そう言われればそうなので、何でふたりも抱えて普通に歩けるのかとの疑問を胸に、迷宮を出るのだった。


 出口近くの救護所へとふたりを預け、俺たちは冒険者ギルドへ向かう。


 冒険者が居たのだから間違いなく冒険者ギルドで受注しているはずで、少年もそう言っている。


 そこには案の定、逃げたおっさんが居た。


 さっさと失敗報告をしてトンズラする気だったのだろう。


「おっさん、また会ったな」


 そう声を掛けるが、相手は俺の事など覚えていない。が、少年には見覚えがあるだろう。


「げ!」


 こんなに早く戻って来るとは思っていなかったらしく、相当に焦っている。


「まあまあ、そう急ぐなよ、おっさん」


 俺はそう声を掛け、ギルドでしっかり事情を聴いてもらう事にした。


「欲をかいて中層に降りたおっさんの落ち度だな」


 依頼失敗と報告して依頼料や雇用料をケチろうとしたらしいが、逆に依頼外の要求をしたとして賠償金が発生する事になった。


 いい気味だ。


「さて、俺は君に興味がある。ちょっと付き合わないか?」


 すべての処理が終わり、少年にそう声を掛ける。


「いえ、あの・・・、僕、そんな趣味は持ち合わせていません!」


 ハァ?と思ったが、ハタと気付く。


「俺もそっちの趣味はねぇーよ!お前のゴーレムだ!興味があんのは!」


 酷い誤解を受けた。 

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