それぞれの夢に向かって12
「りっちゃん、素敵な人、紹介してくれてありがとう」
帰りの電車の中、私が、りっちゃんにそう言ったら
りっちゃんは寝ぼけ眼で、
こくりと、頷いて、私に寄りかかって眠っちゃった
朝から、私の家に来て、昨日のメールを見ると
結構遅い時間になってたりっちゃん
そりゃぁ、疲れてるよね・・・
りっちゃんも、こうやって夢にまっしぐらなんだよね
なんか、足引っ張っちゃってる気もするけど
私は、私で頑張ろう
その内、りっちゃんのお手伝い
ううん、片腕になれるようになったらいいよね
だって、私、
そういう意味では、赤ちゃんだもんね
やっと、自分が何をしたいのか
何が出来るのか、そういう意味で目覚めたばかりの赤ちゃん
今からゆっくり・・・とは甘えていられないけど、
成長して行く予定だもんね
今までさぼってたってことは無いけど
気付かなかったつけが一気に来てる気分
恋愛も、夢も
不器用だけど、できることは頑張りたい
1つ1つ糸と針で縫って作り出す服のように
何か1つでもできるといいなって思う
でも、みんなみんな素敵
さっきの布おばーちゃんと、長尾さんも
おばーちゃんつながりで、絵本作家のかよ子さんも
兎の穴の人たちも、
岡崎先輩もその旦那さまも
それに・・・
篠山さんも、社長も
なんか、向き合ってみて、初めて解ったのは
男の人って仕事してる時が一番格好いいのかも・・・ってこと
正直、なんで、私のこと好きなんだろうって思ってた
でも、好きになるのに理由はないから
ただびっくりして、私が、恋愛する対象とかそういう考えは無かった
むしろ、好きって言われたから、
好きって言わなきゃいけないのかなって思ってた
2人いるから、どっちに好きって言えばいいのか解らなかった
そうじゃなかったら、きっとおつき合いしちゃってたと思う
私の恋愛なのにね、
まるで、他人の為にしてる感じ
そういう所から、考え方間違っちゃってたよね
自分にも失礼だけど、
もっともっと、他人に失礼だよね
最近、秘書の仕事をしながら
二人の・・・まぁ、正確には三人の仕事を見てると
ほんとに、格好いい
いつもはちゃらちゃらしてる課長が
社長や篠山さんが出す案を、手厳しくはね除けてる
採算が合わない、遊びじゃない
そう言いながらも、その案を活かす方向で
動くのは、さすが、大人、といったところ
全部潰すんじゃなく、前後の事を考え
かつ、儲けも、楽しみもする
まだまだ、若い二人に、そうやって教えてるのかな
ただ、課長がこんなに、褒め上手だって思わなかった
なんか、二人が、課長に褒められたくて
お仕事してるみたいな雰囲気があるぐらい
これは、こうでって説明してるのが
わんこのようでちょっと可愛い
ただ、このわんこたち
可愛いし、かっこいいけど
ちょっと凶暴だなぁって思う
凶暴だから、できることがあるだけど
締めるところは締める
言うことは言う
ちょっと喧嘩腰になってる時がある気がするのに
工房のみんなと仲は良好
むしろ、そのディスカッションが大事だとでも言うように
語り合ってる
なんか、割って入れない世界だよね
男の人たちっていうか、弟たちもそうだったけど
喧嘩してるのか思ったら、次の瞬間、笑い合ってるんだもん
もー、ほんと解らない
でも、その雰囲気って悪くないんだよね
喧嘩してる時は、もっと殺伐としてるもん
まぁ、それが解るようになったのは
ちょっと時間が経ってからだったから
弟たちには、かなり文句言われちゃった
ねぇちゃんは、喧嘩と、話し合いの違いも解らないのって
だって、話し合いの気配じゃないんだもん・・・
じゃぁ、怒鳴り合わないでよ、なんて言っちゃったのも
ある意味若かったよね~
怒鳴るって言えば
この前来た、外部の人
あの人は酷かったなぁ
社長が1代目の社長だから
たしかに、会社として歴史はない
そこに目をつけた営業の人をつれた部長さんだったかな
その人が、社長に、ほんと、小間使いのような
お仕事を振ってきた
最初、篠山さんが、ご冗談をなんて言いながら
軽く断ってたけど、
しつこく、ううん、あれは、強請るように仕事させようとしたよね
会社のメイン仕事の1つである地方紙、
クーポン券が付いてたりしたし、地域情報が載ってるから
私も学生の時から使ってて好きだった
それには、やっぱり、協賛企業ってのが有って
その会社の1つが今回の問題の会社だったんだよね
もう、協賛してやらんぞなんて言いながら
そのお仕事を、私が聞いても無茶な納期と
無茶な値段でさせようとするの
篠山さんじゃ聞く耳すら持たなかったから
社長が、きっぱり言ったのよね
「仕事を選り好みするつもりは有りませんが
我が社で出来ること、出来ないことも有ります
協賛企業とはいえ、
我が社の親会社でもなんでもないあなた方に
そのように強制する権利はありません
そのお値段と納期で本当にお出来になると思うなら
ご自身の所でどうぞ」
って
うん、全くです!私もそう思います
そう内心で思いながら聞いてたんだけど
そうしたら、この若造がって、その人きれちゃって
社長に、私が持っていった珈琲カップ投げつけた
中身は空だったんだけど、
ほんっとに、失礼過ぎる人だった
なんか、そう言うところを見て
ホント、格好いいなぁってしみじみ思っちゃった
無理する所はあるけど、
会社も従業員も好きっていうその態度が
社長としても、1人の人としても、魅力的に思えて
これは、文句無しに惚れちゃいました
ちなみに、珈琲カップは無事
だって社長、普通に受け止めたから
どんだけ運動神経良いんですかーと思ってたら
またもう一回キレて帰っちゃいました
でも、その後、文句も言わず
びっくりさせちゃったねって二人が言ってくれて
ああ、余裕ある人っていいなぁってしみじみ思った
私ももっと余裕のある人になるぞー
あ、そろそろ降りる駅、りっちゃーん起きてくださいな
焼き肉うまー
と言うことで、焼き肉でしたー
まだ、バテてないので、出来るメニューですよねぇ
これがばててくると、脂ののった肉とか食べたくもないですもんね
主人公は、更に上の階段に登ってきましたよ~
今後が楽しみですね
では、また明日!




