当たり前の日常9
「かよ子さんって呼んで頂戴
先生って呼ばれるのは、他人さんだけで十分」
なんて、ちょっと辛辣なことをおっとり言いながら
先生は・・・ううん、かよ子さんは原稿を取りに行った
「びっくりした」
かよ子さんが消えて、篠山さんがぽそりと呟いた
「え?」
「直島先生、人嫌いなんだよ
だから、こんな山奥に住んでるし、
その上、気に入った人としか会わないから
ほんっと、会うの難しいんだよね
今回、僕が呼ばれたのは、彼の推薦
ああ、彼の紹介忘れてたね」
そう言うと、かよ子さんの周りを
ちょろちょろする子ねずみのような男性がぺこりと頭を下げて
名刺を取り出して来た
「三木です、どうぞ、よろしく
しかし、先生があそこまで、楽しそうにされてるなんて
どんな魔法使ったんです?」
「ま、魔法ですか?」
私がびっくりしてそう聞き返すと
くすくす笑って、篠山さんが、それくらい珍しいってことだよ
「私から物語の匂いがするって、仰ってましたね」
そう言うと、納得したように頷いた
「先生は、物書きの中の物書きだから
そう言うのには敏感なんですよ
流石、先生ですね」
そう言うと、いつの間にかに帰って来てた
かよ子さんが、
「褒めても何もしませんよ」
って、ぴしゃりと言った
その様子がおかしくて、くすくす笑うと
かよ子さんも、一緒にくすくす笑って下さった
可愛らしくて、雰囲気のある素敵な方なのに
どうして、みんな神経質に扱うのかな?
やっぱり、原稿がいるからかな?
「ユキちゃん見て頂戴」
そう言って、パステルで描かれただろう
柔らかな色合いの絵が私の前に広がった
大きな葉っぱの林の中を、飛ぶように走るりすたち
おしゃべりして、ころがりながら、
地面を木の上で、思い思いに楽しんでる
「可愛い~」
うっとりしながら、原稿をそっと手に取る
「あっ」
そう言って立ち上がったのは、三木さん
「良いのよ?じっくり見て頂戴
貴方、ホントにケチねぇ」
そう言って、ちょっと眉を寄せたかよ子さんに
身じろぎして、三木さんは
「どうぞどうぞ」
そう言って、すとんと座った
どんぐりなどの木の実が
木々や葉っぱの間から覗いてる
これ、探しながら、こんな所にこんなものが!って雰囲気で楽しいかも
「あ、これって・・・」
2枚3枚と、原稿をとる内に、くまの登場人物が現れた
ぶどうを、両手に、口に頬張って
満足そうな食いしんぼうさん
私は、入ってきた時見た人形を振り返って見た
「そうよ、あの子よ」
かよ子さんは、私の視線を追って答えてくれた
「手作り、ですよね?」
そう言うと、こくりと頷いて
「私の旦那様のね」
ええ~、男の方が手芸されるんですか
ちょっと珍しいけど、でも上手だもん
そんなの、どっちでもいいよね
「抱っこする?」
そう言われて、私は、こくりと頷いた
「そちら、見てて、今連れてきて差し上げるわ」
そう言って、かよ子さんはすっと立ち上がった
んー、所動の綺麗な方だよね
ご年輩なのに、どっこらしょ的な動きじゃなくて
川の流れのように、するりするりって動く
踊ってる人みたい
だけど、私は、原稿に夢中
だって、本当に素敵なんだもん
絵だけで、まだ文字は入ってない
だけど、絵だけで、十分楽しめる
秋に出版するからなのか
紅葉の山の物語で
思い思いに秋の一日を楽しむ動物たちが描かれてる
「はい、どうぞ」
そういって、優しく抱いたくまの人形をそっと差し出してくれた
「あ、ありがとうざいます」
そう言って、抱き締めると結構固い
「ちょっと重たいでしょ?
中身が綿じゃないのよ」
へぇ、何で出来てるんだろう
「鉋屑みたいな木でできてるらしいんだけど、私も良く知らないわ
でも、ふにゃふにゃした人形より
私の世界の子たちは、こんな雰囲気だって、おもわない?」
そう言って、かよ子さんは笑う
たしかに、今にも動き出しそうな雰囲気と重み
熊の瞳が、私をじっと見つめてる
「こんにちは」
私は、そう言った
頭の中に、こんにちは、と返った気がした
21時予約 遅くなったので、早くねなきゃねぇ・・・
1時37分です、では、お休みなさい、
そして、今日も楽しんで頂けると幸い、
かよ子さんは、書きやすいですねぇ~
くすくす笑って主人公といろいろ楽しみそうです
では、また明日!




