嵐の後の世界４

「さっぱりって顔だね」

嬉しそうに、篠山さんが笑う

はい、まったくもってさっぱりです

「下着ないから、僕の使わせてごめんね

　ちゃんと新品だから」

袋のままなので、そうだと思いました

そして、篠山さんがボクサー派ということが解りました

前に開きがあるのとサイズ的な問題以外

問題ないですよ

「いえ、助かりました

　流石にあの汗だくの下着穿きたくなかったので」

私が髪をタオルで拭ってると

毛先の方を持ち上げ、タオルで拭いはじめた

「なんか、妹思い出すよ」

妹さんがいるのね、たしかにおにーちゃんぽいですもの

「風邪引いてるから、髪洗うなって言っても

　毎日洗わないと気持ち悪いの

　解らないから言えるんだー

　とか、散々言われて、結局熱だしたり

　乾かなくて、奏と２人ドライヤー持たされて

　乾かすのてつだったり」

くすくすと思い出して笑う優しい顔

ちょっと呆れてるけど、妹さんの気持ちは分かる

「あ、奏は弟ね

　僕の下、双子なんだよ

　妹は、響《ひびき》、弟は奏《かなで》

　親も酔狂だよなぁ

　自分が音楽好きだからってここまでかだよ

　僕の名前は肇《はじめ》ね」

でも、親御さんの気持ち解るかも

可愛いですもの

全部一文字なのかな、はじめにひびきかなでる

子どもたちなんですね

「二卵性双生児ですか？」

そう聞くと、首を振る

「もう、そっくりな一卵性双生児だよ

　ちびの時なんて、親がまた同じ様な服着せて

　髪型にするし、本人たちも楽しんでるから

　声も合わせて、どーっちだとか言うんだぜ

　さすがに今は、ベースは同じだけど

　男女の差がはっきりしてるな」

とろっとろにとろけそうな笑顔で

弟妹が大好きでしかたないって感じ

私も結局そうなんだよねー

一杯いて、いやだーとかいいながら、顔が笑ってるって言われるし

自覚あるもん

なんだかかんだと可愛いんだよね

その気持ちすっごい解る

「よし、こんな感じでいいかな

　次は軽くこれ食べて、薬飲んでから

　ユキちゃん家行こうね」

そうですね、食べないと元気になれません

今できることちゃんとしてないと

もし帰れた時にちゃんと話したいし

もう、本当にいらないなら、地球に帰ってくるだけだもんね

竜の国は好きだったし、暮らしてもいいかなと

悩んでたけど、やっぱり違いすぎたのかな

だから、喧嘩しちゃって

それで世界からはじき出されちゃって

ただ、子竜ちゃんたちに嫌いって言ってごめん

大好きだよ

今までありがとうって言いたい

お風呂で鏡に見せて、と願っても

ぼんやりしたものだけしか映らない

見ることも出来なかった

ちゃんと元気にならないと

篠山さんは優しい人だから、心配しちゃうし

有給もまだまだ残ってる

少しだけ休憩して、また現実で頑張ろう

そうするしか・・・ないよね