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仮面舞踏会 (伸ばしたこの手は……)  作者: 那由他
二章 聖也

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学園の王子たち

聖也の父はゲームクリエイターをしている。聖也自身も幼い頃からコンピュータが好きだった。オモチャの代わりにパソコンで遊び、字を書くよりも早くキーボードを打ち込み始めた。


「将来お父さんと一緒に働くんだ」

楽しそうに笑う父母に、自分が誇らしかった。勉強はした。だが、それ以上にコンピューターにのめり込んだ。そんな聖也を両親は遊園地や動物園に連れて行った。スリルがあったり、ドキドキして楽しかったが、聖也が一番喜んだのはコンピューターゲームのイベントだった。

(すごいな。素敵だな。僕もいつかこんなゲームが作れるようになりたい)


そうしてコンピューター言語を習得し、英語や音楽も独学で学んでいった。中学では当然のようにゲームを作り作曲を手掛けた。聖也のゲームは少なくない利益を出した。それが聖也に自信を生んだ。


中学の進路の話し合いの時だった。


「お父さん。僕高校には行かないよ」

「馬鹿なこと言うな! 高校に行かずに何をするんだ?」

「ゲームを作るよ」

「駄目だ。高校だけは絶対でるんだ!」

「ゲームで食べていけるじゃないか?」

「高校は社会に適応する力を学ぶ場所でもあり、全般的な知識を学ぶ場所でもある。お前にはコンピューター関連だけじゃないか? 家族以外とあまり話せてない。大体、字すらきちんと書かないんじゃないか?」

文字を書くのが苦手な聖也は何も言い返せなかっだ。親以外とも長く喋るのは得意ではない。


「それだけじゃない!高校では友達を作ったり、友達と学園祭や体育祭を楽しんだり、修学旅行や夏休みに一緒に遊びに行ったり、今でしか楽しめないことがたくさんあるんだよ」

「お母さんもそう思うわ」

いつにない両親の真剣な顔だった。たかが高校だと思っていたが、自分の視野が狭かったのかもしれない。


「わかった。行ってみる。将来、成りたいものは決まってるけど、お父さんとお母さんが言うなら、高校でもっと色んなことを学んでくるよ」

「さすが俺たちの子供だ。その三年間は絶対に無駄にならないからな」

「わかってくれて嬉しいわ」


その高校で聖也は生涯の友を得ることになる。


退屈な入学式はいいとして、自分のクラスに入るのはちょっと緊張する。あちこちで小さなグループを作り談笑するクラスメートを見ながら、あの輪の中に入れるのか馴染めるのか不安だらけだ。


「趣味はコンピューターと音楽です。たくさん友達ができたら嬉しいです。気軽に聖也って呼んでください」

予想通り自己紹介は息が詰まった。


「聖也って音楽は何きくの?」

ホームルームの後、不意に隣の席から話しかけられた。


「さっき言ったけど俺は(こう)って呼んでね」

「うん。…僕はロックが好きだな。巧は?」

「俺もロックは好き。ラップも結構好き」

「何? 楽しそう! 僕もまぜてよ!」

巧の幼馴染みだという正海も輪の中に入る。二人と話すのは不思議と苦痛ではなかった。


それから音楽について語り合ううちに、楽器をやるなら一緒に演奏しないかという話になった。聖也はキーボード。巧ははギターを弾く。正海はギターも弾くが、あまり上手くないとボーカル担当だ。


「家来る? 俺のギター見せてやるよ」

「巧って入学祝いに結構いいギター買ってもらったんだよ!」

「見たい見たい! 行くから見せて!」


巧の家は周りより一回り大きな家だった。


「巧って、お坊っちゃま?」

「まさか。違うさ。親父は普通のサラリーマンだから」

「巧のお父さんは優しそうな人だよ。ちなみに僕の家はあっちのマンションだよ」

「うん。早く巧のギター聞かせてよ」

「任せろよ!」

 聖也と正海は声をあげて笑った。


週末に聖也は自宅に二人を招待した。驚く両親にちょっぴりくすぐったかった。


聖也の変化を一番喜んだのはもちろん両親だ。偏りがちな息子に少しでも世界をひろげ、人と関わる素晴らしさを知ってもらいたかったのだ。


「あれっ? これって今聖也が作ってるゲームの音楽?」

聖也が流した録音に巧が反応する。


「うん。そうだよ。これね」

自作の楽譜を二人に見せた。


「へぇー。いい感じじゃん」

「僕にも見せて! ちょっとアレンジしていい?」

「うん。今一ここのノリが決まらなくてね」

聖也の曲を二人がそれぞれ考えだした。


「ここは巧の方がいいし、こっちは正海の方がいいな。一緒に曲を作らないか?」

「面白そうだな。やるやるっ!」

「俺もやりたいな」

「じゃあ、3人で曲作ろうよ! その収入は三等分ね」

「やった! アンプ買いたかったんだ!」

「そんなにはないでしょ? 僕は買い食いにする」

「食い意地はってるな」


3人で軽音部を作った。週末に楽器を抱えて音楽室でセッションした。可愛い一年生3人組が上手に楽器を弾く噂は、静かに学校にひろまり、上級生や教師までもの注目を集めることになった。


「ねぇ。文化祭でステージやらない?」

「いいな、それ」

「じゃあ、まず曲から選ばなきゃね」

「うん。ちなみにバンドの名前って何がいい? 巧はネーミングセンスないから聖也も考えてよ?」

「……まみちゃんズ!?」

「何それ!?」

「悪い。僕もネーミングセンスないみたい」

聞いていた巧が腹を抱えて笑った。それとなく注目していた周囲のクラスメートも思わず笑う。


「聖也が変なこと言うから、みんな笑ってるじゃない!!」

「…それは、まみちゃんが人気者だからだ?」

「ムキーっ!! 何で疑問符なのっ!!」

「巧のそれってフォローになってないよ?」


3人組に最初から注目していたのはクラスメートたちだ。


穏やかで王子さまのような端正な顔立ちの聖也。

ちょっとぶっきらぼうだけど男らしく爽やかな巧。

人懐こく女の子のような可愛らしい正海。


その注目は今や学校中に広がり、3人は知らないところで【学園の王子たち】と呼ばれるようになっていた。

買って使ったけどパソコンの文字は私の文章ではありませんでした。結局、音声入力にしました。


お読み頂きありがとうございます。

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