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俺の異世界姉妹が自重しない!  作者: 緋色の雨
第八章 俺も異世界姉妹も自重しない!

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プロローグ

 今日から八章が開始しますが、今回はプロローグで短めです。

 最後までお付き合いいただければ嬉しいです。

 

 アリスが妊娠したらしい。妊娠検査薬なんてない世界だから確定とは言えないけれど、恐らくは間違いないだろうと訊いている。

 そんな訳で――


「う~ん、音とかはしないなぁ……」

 俺の部屋のベッドに座るアリスの膝を枕代わりに、俺はお腹に耳を押しつけながら呟いた。

「ふふっ、さすがにそう言うのはまだ聞こえないよ」

 そんな風に言いながら、アリスは俺の頭を愛おしそうに撫でてくれる。

 前世では彼女すら作る前に死んでしまった。そんな俺が生まれ変わって可愛い彼女を得て、子供まで作ることが出来た。


「俺は今、幸せだなぁって思う」

「ふふ、私も幸せだよ。この世界でリオンと出会えて本当によかった」

「そこは兄さんと再会できて、じゃないのか?」

「もちろん、それもあるよ。でも、前世で淡い思いを抱いていた裕弥兄さんと、リオンの魂が同じだっただけ。私が好きになったのはリオンだよ」

「……アリス」


 それはつまり、初恋を諦めて、俺を好きになったと言うこと。どちらも俺なので少し複雑だけど……俺は嬉しいと思った。

 俺もアリスを好きになったのは、前世の妹だと知る前だったから。


 アリス達や、その子供達と、この世界で幸せに。そのためには、いくつか解決しないといけない問題がある。その一つ目は、いまだに結婚式を挙げていないと言うこと。

 アリスだけじゃない。クレアねぇやソフィアとも婚約しているのに、アリスと子供を作るのを優先して、二人にはお預けをしたままで、もちろん結婚式も挙げてない。


 それに、あと一年を待たずして子供が生まれてくる。だと言うのに、ミューレの街の医療技術は日本とは比べるまでもなく低い。このままでは、子供が病気になったときに困るので、急いで技術を進歩させなくてはいけない。

 なんとかしないとなぁ……と、俺はアリスの膝の上から起き上がった。


「……リオン? 急にどうしたの?」

「いや、その……」

 アリスは妊娠して多感な時期だ。不安要素を話すべきではないだろう。そう思ってごまかそうとしたら、ほっぺたをむにょんと摘ままれてしまった。


「……いひゃい」

「リオン、私に隠し事はなしだよ。どうせ私に心配かけないようにって思ってるんだろうけど、私はその方が心配なんだからね?」

 微笑みつつも、どことなく不安げに見える。言葉どおり、心配をかけてしまったらしい。

 ……ダメだな、俺は。そろそろ成長しないと。


「心配かけてごめん。俺達、婚約はしたけど、結婚式は挙げてなかったなぁと思って」

「あぁ、そうだね」

「そうだね……って、忘れてたのか?」

「忘れてはないよ。ただ、リオンは忘れてるんだろうなぁって思って」

「うぐ……」


 実際忘れていたので反論の余地がない。いや、言い訳をさせてもらうなら、婚約の時のあれが派手すぎて、結婚式を挙げたつもりになっていたのだ。

 だから、俺は悪くない。……いや、ごめんなさい、俺が悪かったです。


「結婚式、挙げてくれるの?」

「うん、アリスさえよければ」

「もちろん、ただ……一つだけ提案があるんだけど」

「……提案? もちろん、アリスの提案なら最大限考慮するけど」

「なら、クレアやソフィアちゃんと一緒が良いな」

「それは……良いのか?」


 たしかに、婚約は三人一緒で、俺は三人とも大切にすると誓った。子供の件ではアリスを優先したけど、他の二人をないがしろにするつもりはない。

 三人一緒にと提案してくれるのは嬉しいんだけど……ホントに良いんだろうか?


「もちろん、良いよ。と言うか、一緒が良いの。今の私達があるのは、二人のおかげだし」

「そっか……そうだな」

 最初の頃の俺は、前世の実妹と付き合うことに抵抗を感じていたからな。


「でも、四人で結婚式となると……それなりに派手にしないとダメな気がするなぁ」

 三人とも、今やこの世界の有名人。婚約の宣言ですら、王族の前でおこなったのだ。結婚式が慎ましい感じだと、色々言われそうだ。

 かといって、あまり先にするとアリスのお腹が目立ってくるかもしれない。


「じゃあ……その辺はみんなと相談、かな」

 俺はそんな風に纏めようとしたのだけれど――アリスに、ごまかされないからねと微笑まれてしまった。


「リオン、さっき焦った顔をしてたよね? でも、結婚式のことだけなら、そんなに焦る必要ないよね? 他にも、なにか心配事があるんじゃないの?」

「むぅ……アリスは鋭いな」

 俺はため息をつく。アリスに余計な心配をかけたくないのだけど、こうなったら素直に話すのが一番だろう。


「で、リオンはなにを心配してるの?」

「日本と比べたら、医療技術が低いだろ? 子供が病気になったときに、なんとか出来るようにしたいなぁって思って」

「あぁ……ペニシリンの研究はまだまだ進んでないんだっけ」

「うん。地球でも、実用まで十年くらいかかったらしいからなぁ」

 いくら答えを知っているとは言え、その過程は分かっていない。当時の地球と比べて遥かに技術が劣るこの世界で完成させるのには、それなりの年月が必要になるだろう。


「ん~研究を加速させるには、環境を整えるしかないんじゃないかなぁ」

「そうなんだけど、それが出来れば……」

「出来るよ?」

「……え?」

 思ってもいなかった言葉に、俺はまじまじとアリスを見た。


「スイッチ式の紋様魔術を研究してたでしょ? あれを完成、改良させたら色々と応用が利きそうなんだよね」

「なるほど……」


 この世界おける魔術は、前世の科学に勝るとも劣らない。それを紋様魔術という形で、誰もが自在に扱えるようになれば……今まで出来なかったことが出来るかもしれない。

 よし……そうだな。まずは結婚式の準備。そして、子供が生まれたときの環境を整えるため、この街の技術レベルの向上を頑張ろう。

 

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