表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

敵基地攻撃という虚構

 昨今敵基地攻撃という言葉が飛び交っているが、それが何なのか、本当に説明できる人は居るのであろうか?

 漢字というのは表意文字であり、そこに書いている事がそのままの意味を持つ、英語などのように単語に複数の解釈が付いて回り、組み合わせや文節でその時々で意味合いが複数あったりはしない様に見られているが、この「敵基地」が明確に何かを示していると考えるのは早計であり、もはや間違いとさえいえる。


 敵基地攻撃の初出は今から60年近く前の話であり、それが21世紀を迎える頃に再び脚光を浴び、何の精査も無くそこから20年近く使われ続け、もはや本来の意味から遠く離れてしまっているとさえいえる。


 まず、本来的にこの敵基地攻撃が示しているのは、明示的にそこに存在する喫緊の脅威に対し、相手が行動を起こす前に破壊できるという、先制自衛権の事例として持ち出されたものである。


 1960年頃というのは、未だ弾道ミサイルというのは今の打ち上げロケットのように地上の発射台に据えられ、数時間、あるいは数日にわたりその発射準備が外から確認可能なものとされていた。


 この後に水中から発射する潜水艦発射型や地下サイロ、あるいは車両や貨車へ搭載した移動式へと発展を遂げることになる。

 そんな過渡期に、攻撃を受ける以前であっても明確に攻撃の意思を持つ行動であるとして例示され、先制自衛権が合法である論拠とされた。


 しかし、その後は先に挙げた、事前の準備行動を察知できない発射手段へと移行していったので、いつのまにやら論じられなくなっていた。

 ところが、1998年に北朝鮮が実験用発射台にテポドンを据え付け、そのロケットが日本を飛び越えた事で再度掘り起こされたものである。


 だが、この時点ですでに破綻した論議であったことにどれだけの人が気付いているだろうか?


 1998年の時点で日本を狙うミサイルは、試験発射台から発射する必要があるテポドンではなく、1993年にスカッドミサイルから発展したノドンと呼ばれるミサイルである。ソレが日本海へと撃ち込まれ、その素性がイラクのミサイル同様にスカッドを母体として射程が延された射程伸長型ミサイルであると分析され、日本にも届くと推定されたことから、その脅威に対抗するために米国が唱えたTMD計画に参加し、迎撃ミサイル開発に資金を投じていた。

 このノドンはトラックに搭載し移動する事が出来るスカッドをベースに開発されたミサイルなので、トラック移動によって事前の探知を避けることが出来ると目されていた。

 つまり、そもそも湾岸戦争がそうであったように、見つけ出すのが困難で発射されたのちに撃ち落とす事を考えないと防ぎようがないという現実に直面したからこそ、米国が掲げたTMD計画に日本は飛びついた。


 つまり、実は無理だと分かっていたのに、あとから登場したより大型の実験機を殊更に危険だと煽ってカビの生えた時代遅れの考え方を引っ張り出してきたに過ぎない。


 立憲だかの議員が敵基地攻撃論を時代遅れと批判して大きな反発があったが、敵基地攻撃論などカビの生えた時代遅れの論議だというのが真実である。


 さて、こう書くと世の酷使さまが金切り声を上げて反発してきそうだが、事実なのだから仕方がない。


 もちろん、発射前に全く撃破出来ないかというと、そんなゼロヒャク論の話にはならず、論理的には撃破可能である。

 ただし、撃破するには北朝鮮上空を常時複数の偵察機で監視し、北朝鮮上空や近海に攻撃態勢にある航空機や艦艇を配備していればという条件付きでの話になる。

 

 要するに、戦 時 で あ れ ば 不 可 能 で は な い 。


 しかし、敵 基 地 攻 撃 論 と い う の は 平 時 の 話 し な の で 、戦 時 の 論 理 は 通 用 し な い。

 

この先制自衛権もとい、「着手から後の先を取る」という論法が成り立つには、先に述べた様に宇宙センターで発射の何時間も前から準備が行われていなければならない。そうしないとこちらの攻撃準備が整わないのだから。


 「そんなことはない!」


 などと戦時中の狂信的な軍人のように叫ぶ人も出てくるだろうが、事実である。


 例えば、この話を始めると改憲だとかネガティブリストだとかいう人も出て来るだろう。しかし、それすら何の意味も無い。


 もし、改憲してネガティブリストであれば何でもできるようになると思っているとしたら、全くの幻想でしかない。その様な虚構に踊らされて「敵基地攻撃」を支持しているなど噴飯ものと言って良い。


 何をバカなと思うのであれば、昨今の気球問題を振り返ってみれば理解できるだろう。


 撃墜された気球は何日も前からアラスカへと上陸し、北米を飛行していたという。しかし、ネガティブリストで何でもできるはずの米空軍は撃墜していない。


 地上にあったから撃墜しなかったなどと言う話ではなく、そもそも気球を撃墜するという事項がネガティブリストの可能事項に存在せず、大統領の撃墜命令が出るまで手段として撃墜が選択されていなかったからだ。


 ネガティブリストなら何でもできるなどと言うのがそもそもの大間違いで、軍隊というのは最高司令官が許可しなければ指先一つ動かせない組織である。


 さて、それを前提に平時の「敵基地攻撃」の話に戻ろう。


 もし、平時に「着手」を確認したとしても、それはまず政治の側においてその事実を検証し、攻撃命令が発せられるまで軍隊は行動できない。もちろん、命令も無く勝手にミサイルを戦闘機に積んだり発進するなどあり得ないし、艦船を北朝鮮へと接近させることもできない。


 つまるところ、「僅か1時間以内」といった短時間で発見から破壊までを完結させることは平時において不可能なのである。ミサイルを撃破できるかどうか以前の話しと言った方が良いかもしれない。


 敵基地攻撃論は地上のよく見える発射台に何日も、あるいは何時間も無防備に据え付けられ準備が行われるミサイルが存在する前提の話であって、移動式の発射装置が常態化した今の北朝鮮に当てはめること自体が不可能なのは火を見るよりも明らかである。


 さらに、そのカビの生えた時代遅れの論議を島嶼防衛や台湾有事に当てはめて論じるなど、もはや何も論じていないに等しい。


 島嶼防衛や台湾有事というのは「敵基地攻撃論」とはかけ離れた事例であり、同じ「敵基地」だからといって、同列に論じる話ではない。


 戦争が始まってしまった段階においては、侵攻されて構築されてしまった「敵基地」であろうと、出撃拠点である港や飛行場という「敵基地」であろうと、そこを攻撃するのは自衛権行使であり、専守防衛の枠内でしかない。

 そして、そもそもの話し、集団的自衛権による行動は要請した国を助けるための行為なので、専守防衛の出る幕はない。


 更に言うなら、専守防衛という言葉自体も、表意文字の呪縛からとんでもなく誤解されているが、内容は国境から一歩も外へ出ないなどと言う矮小な意味などは無く、領土拡張や緩衝地帯構築といった侵略的な野心は持たないといった意味合いでしかない。


 敵基地攻撃や専守防衛といった表意文字をそのままに語ることがいかに危険か、中身を知ろうともせず振り回した結果が今の状況なのだから、もはや手のつけようがないのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] というかね、敵基地攻撃論って結局のところ二次大戦以前の感覚的(ドクトリン的なそれではなく文字通りの感覚的発想)でしかない。 言ってみれば、真珠湾攻撃やミッドウェー攻撃、フィリピン・クラーク…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ