無人機には無人機って言うけど、違うのよ?
今日の昼頃、立憲の泉代表のXで「無人機に対しては無人機で対応を」ってポストが上がっていた。
何だかそれっぽく聞こえるのだけど、それを考えるにはまず、領空侵犯対処とは何ぞや?という話を理解しないといけない。
まあ、その前に似たような話を昔外国でも行われた事例があるので紹介しておくと、ミサイル万能論たけなわの頃、オーストリアにおいて同じような話が出た事がある。曰く「領空侵犯というのは国際法違反なのだから、飛行機飛ばすくらいなら、レーダーに映って警告しても進路変えない奴は撃墜しちゃえばイインデネ?地対空ミサイルなら出来るよね?(意訳」って話があったが、さすがに実行されることは無かった。
何でか?
それが領空侵犯対処であって防空戦じゃないからだよ。
確かに国際法は領空侵犯を行う航空機があれば撃墜を認めている。その事もあって60年代ごろには何件も実際に撃墜した事例がある訳だが、撃墜後にその正当性に疑問が生じた事例が存在している。とくに民間機についての事例は深刻で、その後に国際法にも民間機は例外とする補足事項が追加されたほどだった。
最近話題になった気球事件に関しても、米空軍が中国の気球を撃墜した直後、カナダも同様に気球撃墜を実施したのだが、実はそれは国内の民間気球で中国の不法気球ではなかったという問題が起きている。
次に無人機の問題も見ていこう。
無人機と言えばアフガンにおける誤爆で有名になった。結婚式で派手に騒ぐ姿をテロキャンプと誤認して爆撃しただとか、畑仕事をする老婆をテロリストと誤認したと言った話は有名だろう。
それがどういった理由に起因するかまでは知っているだろうか?
批判的な意見としてゲーム感覚で現地の「空気」を感じ取れあかったというものも存在するし、ただカメラのみで確認るのでは、現場の状況が分からないというのは批判云々では無く指摘された事だった。
さて、そうした過去の事例や無人機の限界を知った上で、泉代表の意見を見返してみようか。
領空侵犯対処というのは、民間レーダーに映し出される便名や所属と言ったデータが記載されない機体、飛行計画を逸脱して飛行している機体。飛行許可が下りていないのに、他の機が飛ぶルートを飛んでいる機体なんかに行われる訳だが、データがない機体をどうやって有人機か無人機かを判断するのだろうか?
飛んで行って実際に目視する事で、その機体が有人であるか無人であるか、どういった機種なのか見極めることになる。はじめっからそれがすべてわかって飛んで行くわけではない。
飛行計画にない機体、機体データを発信していない機体なのだから、その機体がナニカという事を確認するためにスクランブルしてるんだ。
相手が何かわからないのに無人機だろうから無人機を飛ばすというのでは、問題以前の話ではないだろうか?
ミサイル万能論の時代にスクランブルを止めてミサイルで撃墜しようと言い出した話と非常に似ている気がする。
結局、スクランブルという行為が、実際にその機体に接近して機種や場合によっては相手の状態や目的を知るために行うものだという事を理解できていない。
なぜ人間が現場に飛ぶのかと言えば、そこで判断材料を得るため。アフガンの例のように現場の「空気」を測れない無人機では、機敏な判断が難しい。単に杓子定規にやれば良いだけならば、配膳ロボの様に簡単に無人化が可能だよ。どこの国もそうなっていないというのは、簡単にできない理由があるからと言う他ない。
さらにもう一つの問題は、無人機だから負担軽減になるという誤った認識だろう。
現在世界で運用されている大型無人機は自律型AIではなく、地上オペレーターが操作している。機体に乗り組んでいないだけでパイロットが操縦することには変わりない。
さらに、ここ最近日本に飛んできた中国の無人機が500km程度の速度だから云々というが、中国には旅客機と変わらない巡航速度を持つ物も存在しており、無人機だからプレデターのようなプロペラ機で良いんだというのも大きな間違いであり、結局は戦闘機と変わらない音速程度の速度を出せる、或いは旅客機並みの巡航速度が可能な無人機を用意しなければならない。
それってどんなモノかと言えば、単価数十億円という戦闘機と変わらない機体となる。
さらに問題なのは、無人機だからコスパ良いという幻想を前提に話をしている事だろう。
相手が無人機を盛んに飛ばすから戦闘機やパイロットが消耗するんだとその理由を力説するが、単価数十億円の戦闘機やビジネスジェットサイズの機体を維持するには、費用はほぼ戦闘機と同じだけ掛かるし、整備の負担は何も変わらない。
そうした点は既にアフガン戦争において米軍が実証している所である。無人機の問題点は何も誤爆の危険性やオペレーターの負担に留まらず、結局現地に有人機を派遣したのと変わらないコストを要するので、負担の大きなオペレーターを多数雇用することも相まってコストダウンなどまるで望めなかった。
そう言う点も含めて考えれば、泉代表の言う「無人機には無人機を」というのは、「では、戦闘機とは別枠で、何百億、何千億という無人機予算の増額に賛成なんですよね?」という話に帰結してしまう。
それだけに留まらず、整備員やオペレーターの過重労働であるとか、過密問題解消や到着時間短縮のために島嶼部の民間空港利用であるとか。現行の戦闘機部隊に上乗せして無人機を運用するには、解決しなければいけない問題は山ほど積み上がっている。
そうした点の解決策を持ってるのだろうか?
予算、運用、人員。それらの解決策もなく、20年近く前に米軍が夢見た「コスパの良い無人機」を未だ妄想しているのだとしたら、「そんな寝言は寝てるときに言えよ」という言葉しか返せなくなってしまう。




