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見習い神主と狐神使の、あやかし交渉譚  作者: 江本マシメサ
第一部 見習い神主と狐神使の、あやかし没交渉

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番外編 もちの水主村家観察日記

 私、モチは、水主村家に居候の身としてくらしている犬だ。


 三食昼寝散歩付きという、贅沢な暮らしをしている。そんな生活もたらしてくれるのが、水主村家の方々だ。


 まず、家長の水主村翼殿。陽の出前に起床し、神々に仕える毎日を送っている。


 神社に行く前に私のもとへやってきて、撫でてくれるのだ。忙しい時間に恐縮ですと、尻尾を振って伝えている。


 次にやってくるのは、水主村家の長男勉さんだ。朝が苦手なのだろう。開ききっていない目を瞬かせながら、出かけている。父親の手伝いをするため、神社に向かうのだろう。若いのに、感心だ。


 太陽が登ると、翼殿の細君エミリー様がやってくる。自由の女神のごとき美しさで、ごはんを用意してくれるのだ。エミリー様は毎朝おいしいかと聞いてくるので、もちろんですと答えている。


 続いて、翼さんとエミリー様の二番目の子ども、紘子さんがやってくる。喜んで駆け寄っていったものの、登校前だから触れないと言われてしまった。紘子さんが遊んでくれるのは、だいたい夕方だ。だから、楽しみにしていると尻尾を振りながら、登校していく紘子さんを見送った。


 昼間、水主村家の人々は忙しい。そんな中でやってくるのは、三狐様だ。暇つぶしなのか、私をよしよしと撫でてくれる。そんな三狐様は、突然私に語りだす。


「モチ……人というのは、不思議ですね。ここに来てからというもの、嬉しい、楽しい、悲しい……ほかにもたくさんの感情に、支配されるのです。それは、神使として、いいことなのか……」


 それは、人だけではない。私だってそうだ。今日は天気がよくて気持ちがいい、朝から勉さんに遊んでもらって楽しかった。ごはんがおいしくて幸せ。


 これらは、誰もがごくごく普通に感じることだ。


「そう、ですか。人だから、ではないのですね」


 そうなのだ。だから、気に病むことはない。


「ありがとうございます。モチ」


 このようにして、三狐様の人生相談にのっている。


 夕方になると、待ちに待った散歩の時間だ。勉さんが、毎日連れていってくれる。


 勉さんの隣を歩く三狐様は──嬉しそうだ。もちろん、勉さんも。


 ふたりの様子を見ていると嬉しくなる。


 三狐様と勉さんがニコニコしている毎日が、これからも続けばいい。


 そう、私は思った

明日から第二部をスタートします。不定期更新です。どうぞよろしくお願いいたします。

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