番外編 もちの水主村家観察日記
私、モチは、水主村家に居候の身としてくらしている犬だ。
三食昼寝散歩付きという、贅沢な暮らしをしている。そんな生活もたらしてくれるのが、水主村家の方々だ。
まず、家長の水主村翼殿。陽の出前に起床し、神々に仕える毎日を送っている。
神社に行く前に私のもとへやってきて、撫でてくれるのだ。忙しい時間に恐縮ですと、尻尾を振って伝えている。
次にやってくるのは、水主村家の長男勉さんだ。朝が苦手なのだろう。開ききっていない目を瞬かせながら、出かけている。父親の手伝いをするため、神社に向かうのだろう。若いのに、感心だ。
太陽が登ると、翼殿の細君エミリー様がやってくる。自由の女神のごとき美しさで、ごはんを用意してくれるのだ。エミリー様は毎朝おいしいかと聞いてくるので、もちろんですと答えている。
続いて、翼さんとエミリー様の二番目の子ども、紘子さんがやってくる。喜んで駆け寄っていったものの、登校前だから触れないと言われてしまった。紘子さんが遊んでくれるのは、だいたい夕方だ。だから、楽しみにしていると尻尾を振りながら、登校していく紘子さんを見送った。
昼間、水主村家の人々は忙しい。そんな中でやってくるのは、三狐様だ。暇つぶしなのか、私をよしよしと撫でてくれる。そんな三狐様は、突然私に語りだす。
「モチ……人というのは、不思議ですね。ここに来てからというもの、嬉しい、楽しい、悲しい……ほかにもたくさんの感情に、支配されるのです。それは、神使として、いいことなのか……」
それは、人だけではない。私だってそうだ。今日は天気がよくて気持ちがいい、朝から勉さんに遊んでもらって楽しかった。ごはんがおいしくて幸せ。
これらは、誰もがごくごく普通に感じることだ。
「そう、ですか。人だから、ではないのですね」
そうなのだ。だから、気に病むことはない。
「ありがとうございます。モチ」
このようにして、三狐様の人生相談にのっている。
夕方になると、待ちに待った散歩の時間だ。勉さんが、毎日連れていってくれる。
勉さんの隣を歩く三狐様は──嬉しそうだ。もちろん、勉さんも。
ふたりの様子を見ていると嬉しくなる。
三狐様と勉さんがニコニコしている毎日が、これからも続けばいい。
そう、私は思った
明日から第二部をスタートします。不定期更新です。どうぞよろしくお願いいたします。




