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『ニ十六人』の母親 (5)

 私は、

ガリ勉君に転向した事を、

後悔している。

元々、底辺コースだったのだし、

金持ちの子じゃ無いんだからさ。

父親が、

「家を売って、新しい家を建て、引っ越す」と言い出した時、

徹底的に反抗して、阻止すれば良かったんだよ。

私には、

その勇気が無かった。

昔の父親は、恐かったんだよ。

なにしろ、

戦争中は、

学校で『人を殺す訓練』を受けていたワケだから。

母親だって、

女学校で風船爆弾を作っていた。


 人生は一度しか無いんだからさ。

その一番美しい季節を楽しまなくて、

どうする?


 『二十六人』の葬式の話は、

私に、

そんな感情を抱かせた。


 『ニ十六人』の葬式には、

元BO○WYの○○のマネージャーが来ていたらしい。

『ニ十六人』の父親の葬式には、

○○本人が来たのだけれど。

ちなみに、

夜の街で知り合った『布○の幼馴染』氏の話に拠ると、

「『オ○ムちゃん』は義理堅い性格」なのだそうだ。

○○は、

地元では、『オ○ムちゃん』と呼ばれていたらしい。

底辺不良中学にも『オ○ム』が居るので、

底辺不良中学の連中は、

○○を『寺○』と呼んで、区別している。


 いきなり、

元BO○WYの話を、

『情報通』から聞かされても、

私は『?』だった。

だって、

彼等が売れた時には、

私は既に大人になっていて、

芸能人なんて、どうでも良かったんだよ。

そもそも、

(私よりも、ずっと若い)

と勘違いしていたし。

関心なんて、全く無かった。

唯一、興味が有るとすれば、


 (あんな田舎で、

バンド活動とか? どうしていた?)


 話はズレるが、

これも、『布○の幼馴染』氏に聞いてみた。

答は、

「農家の納屋を借りて練習していた」

だった。

その他に、

昔在ったレコード店の三階を借りたり、

私の地元にまで遠征していたらしい。

『情報通』は、

○○と、昔からの知り合いの様な口振りだったけど、

この遠征で、

『ニ十六人』から紹介されたのか?

『布○の幼馴染』氏も、


 「高校時代の○○には、

暴走族みたいなヤバい人達がファンで付いていて、

それで、

布○は○○を恐れていた」


 そのヤバい人達の中に、

私が通っていた底辺不良中学の連中も、

含まれるのだろう。


 話を戻すと。


 『?』の顔をしている私に『情報通』は、

「『ニ十六人』は、

高校で○○と一緒だったんだよ」

と説明してくれた。

それを聞いた私は、

遠距離通学していた『ニ十六人』に、

駅で会った事を思い出した。

父親の出身高校に、

わざわざ通うためらしいが、

そこで○○と知り合うとは、

苦労は、してみるものだ!


 でも、

直ぐに、疑問が生じた。


 普通、

あれだけの大スターに成れたのだから、

○○は、

高校生の時には、既に飛び抜けた存在だったはずで、

そんなモンスターの話が、

何故? 『ニ十六人』自身の口から出なかったのか?


 私は、

高校に入学してから、二回程、『ニ十六人』に会っている。


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