『二十六人』の母親 (4)
「二人共、四十歳にも成れずに、
死んでしまった!」
そう言って、
『情報通』は、涙をボロボロ流した。
話はズレるが、
私は、
他人が死んだ話に、あまりリアリティーを感じ無いんだよね。
それは、
「私自身が死んだ」と言う噂が、
若い時に流れたから。
高校の時に同じ学年で、
大学では後輩だった奴に会ったら、
「お前! 地元じゃ、死んだ事に成っているぞ!」
「物理の教師が、
【あの△△(注、私の苗字)が死んだ!】って、
言いふらしているらしい」
高三の時に物理を教わった教師が、
私が死んだ事にしてくれた様だけど。
その後、
野暮用が有って、高校へ行ってみた。
職員室で雑談していたら、
その物理教師が授業から戻って来たので、
私が微笑むと、
幽霊でも見たかの様に青い顔をして、
目を逸らして、避けて行った。
私自身は生きているからね。
他人が死んだ話を聞かされても、
(コイツも生きてんじゃね?)
と思ってしまう。
話を戻すと。
『情報通』は、
泣きながら、
『ニ十六人』の葬式の話をし始めた。
その内容は、
その時の私の心境には、
ピッタリと合っていた。
その同窓会で、
別の奴から、こう言われたんだよ。
「『△△(注、私の苗字)が、
私立のキリスト教系お嬢様女子高でナンパしまくっている』って、
高校の時は、
有名な話だったぜ」
その噂が真実だったら、
どんなに良かった事か!
実際の私は。
男子校に通って、
ガリ勉君に専念していた。
女性と知り合う機会は、
ほとんど無かった。
それが、私には、都合が良かったんだよ。
だって、
私は、
知らない女には、
無茶苦茶モテるんだぜ。
知り合いの女には、嫌われているのに。
私の場合、
中身と言うか? 人格に問題が有るので、
誰にも知られないで、
ひっそり暮らしていた方が良かったんだよ。
それでも、
全然知らない女に、
突然、呼び止められて、
「付き合って下さい!」
とか、言われた事が、
それなりに有った。
そんなんだから、
クラス旅行とか、すると、
旅先で知り合った女の子から、
必ず連絡が有って。
高ニの夏休みも、
クラスで、とある山に泊まり込んで、
そこで出逢った高ニの女子から、
御誘いが有った。
彼女の地元の本屋に、一度だけ行った事が有るので、
その本屋の隣の喫茶店で会う約束を。
話はズレるが、
何故? 隣の本屋の話を、わざわざ書いているのか?
と言うと、
『今日か○俺は!』のTVドラマを觀ていたら、
その本屋がロケに使われていたんだよ。
あの時は後悔したな!
話を戻すと。
デートの日には、
午前中に、夏休み明けの実力テストが有った。
古文のテストが壊滅的だったので、
デート場所の隣の本屋では、無く、
地元の本屋へ直行して、
『古文研○法』と言う参考書を買い、
勉強していたんだよ。
女子高生とのデートをすっぽかして。
なっ?! ウルトラパーだろ?
そこまで努力して、
苦労に苦労を重ねて、
やっと手に入れた物は、
『医学部に合格した入学祝いに、マンションや一戸建てを買って貰える人達』と、
同じ舞台に立てる権利だった。
もちろん、
そんな人達と勝負しても、
勝ち目なんて、
無いんだけど。
それが、
【資本主義社会】さ。




