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『二十六人』の母親 (1)

 私は、

中二の時に引っ越した。

市外へ。

それでも、

底辺不良中学へ通い続けた。

底辺不良中学は市立中学なのに。


 何故? そんな事が可能なのか?

については、

毎度お馴染みの、

『日本は、昔から、【不正と忖度】の国だった』

と言う事で。


 そして、

私は今でも、

夢の中では、引っ越し前と同じ家に住んでいる。

少年期を過ごした家に。


 引っ越し後の家の夢も、

たまに見る事は有る。

でも、

十六年前に自分で建てた一戸建ての夢は、

一度しか見た事が無い。

さらに、

九年前に買ったマンションの夢は、

一度も見た事が無い。

今では、

週に五日、そのマンションに泊まっているのに。


 その引っ越し前の家は、

五十九年前に父が建てた物件で、

それを売り飛ばして、

父は二軒目を手に入れた。

今は、

廃墟となっている。

その廃墟を、

「買い戻したら?」

と、

妻は奨めてくれるが、

今の私の財力では、

買い戻して、リフォームを施せば、

ほとんど資金が枯渇してしまう。

若い時は、

(簡単に買い戻せるだろう)

と思っていたけど。


 そんな私の夢の中では、

家から百メートルくらい南ヘ歩いた所に、

ビルが建っていた。

現実には、

肉屋が在った場所のハズなのだが。


 話はズレるが、

その『肉屋の息子』とは、

小学校五・六年の時、

同じクラスだった。


 彼は私の事を『江○』と呼んだ。


 何故? 伏せ字になっているのか?


 その『江○』は、

実在する地名で、

昔は、精神病院で有名だった。

つまり、

差別用語なので。


 小学校五年生の時、

『キチ○イ』という意味で、

私は『江○』と呼ばれていた。

でも、

六年生になると、

『肉屋の息子』と仲が良かった奴が、

本物の江○に引っ越してしまい。


 現実は皮肉な物だ。


 話を戻すと。


 私は、

三十年ぶりに、

地元ヘ帰って来た。

肉屋の在った場所ヘ行ってみると、

本当にビルが建っていた。

昔は辺鄙な所だったのに。


 私は、

現実が夢の通りになっている事に驚いた。


 そして、

『肉屋の息子』が、

癌で早死した事を聞いた。



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