「『ぬう坊』がイジメられている!」 (8)
『何故? 此処に?』は、不満そうな顔をしていた。
彼は、
私と戦う覚悟が有ったと思うよ。
【お馬鹿さん】だからね。
コストとか、考えないし。
トップ高に挑戦して、落ち、
大学入試も、早稲○大学に入れるまで、頑張り続けた。
その犠牲さえ考慮に入れていたら、
たぶん、
やらなかったんじゃないの?
私なんか、露骨に、何も考えていなかった。
受験は、
努力さえ出来れば、クリア出来る。
努力に必要な物は、
【時間】と【体力】と【金】だ。
T大の自治会の委員長と雑談していた時に、
彼が、こんな事を言っていた。
「T大生って、
頭が良いんじゃ無くて、
【体が強い】んだよね」
「この場合の【体が強い】は、
『スポーツが得意』という意味では無くて、
『疲れ無い』とか、『体が痛くならない』とか、『病気にならない』とか」
私は、
【体の強さ】に恵まれていた。
透析になって十三年経つけど、
『透析後にジムに直行』とか、狂った事を始めた。
癌患者よりも重病なんだけれども、
体に痛い所は、一つも無い。
十四歳年下の妻は、
「頭が痛い!」とか、「お腹が痛い!」とか、
年がら年中、言っているけど、
私は、ならない。
もちろん、
風邪も引かない。
『馬鹿は風邪を引かない』は、本当だと思うよ。
話はズレるが、
TVドラマの『今日か○俺は』で、
「先生!? T大って、喧嘩強いんですか?」
「たぶん、弱いと思うぞ」
というシーンが有ったんだけど。
それは、
低学歴正義教の方々の願望が創り出した妄想で。
現実には、
強いと思うよ。
T大生は、メンタルも強いし。
T大闘争が起きたのも、
T大生が喧嘩が強いのが、一因だ。
「実兄が外務大臣の某T大教授が、
『もう、学生を恐れなくて良い』と言った」
と、講師の人が怒っていたけど、
昔のT大生は、
権力者が恐れる程、恐かったらしい。
話を戻すと。
私は、
そのクラス全員に向って、
演説を始めた。
『ぬう坊』と一緒に、黒板の前に立っていた二人を無視して。
私の判断では、
(『何故? 此処に?』は、
一対一の戦いを私に挑むほど、そこまで馬鹿じゃ無いだろう)
と思っていた。
もう一人の、不良の方は、
最早、どうでも良かった。
そして、
私に無視された事で、身の安全が確保された二人は、
藪蛇を突く様な、愚かな真似は、しなかった。
実は、
私が通っていた底辺不良中学では、
暴力事件は、ほとんど起き無い。
有るとしたら、
私が引き起こすくらいで、
次は、
『山下二世』かな?
でも、
彼は、
私ほどウルトラパーでは無いので、
相手を大怪我させるまでは、しない。
では、
何故? 私はクラス全員に向って、演説をする必要が有ったのだろうか?




