第739話 従者達のひとときの終わり
「ソフィア様!! ソフィー殿の行方が知れません!!」
「………どうしてそうなった」
呑気にティータイムを取っていた。
その時に、デートに行っていたはずのヒューバートが血相を変えて飛び込んできた。
ソフィーの姿は見当たらない。
真っ青な顔で縋りつくかのように飛びついてきた(という表現が1番良い)ヒューバートに、身を引く。
ソファーに座っている私の足もとに、土下座する勢いだ。
「街で騒ぎがあって、確認して戻ったらいなくて!!」
………騒ぎがあったから、ヒューバートはソフィーを置いて、様子を見に行ったということだろうか?
ソフィーが行方不明なのに、私は動揺してなかった。
誘拐だとしても、ソフィーは私と違って精霊だ。
人間に傷つけられやしないから、無事に決まっているだろう。
これが人であるアマリリスやフィーアだったら取り乱してたね。
ソフィーがヒューバートに言付けなしに姿を消すとは思えないから、まず攫われたか何らかのトラブルに巻き込まれたのだろう。
「聞き込みしなかったの?」
「ソフィア様と瓜二つのソフィー殿の特徴を聞いて回っては、まるでソフィア様が行方知れずになったかのように噂になるでしょう!?」
「………それもそうね」
っていうか、焦っているのに意外と冷静ねヒューバート……
私の顔を知っているだろう城下街の人間に、聞いて回るのはさすがにね……
………まてよ。
それなら私がラファエル以外とデートしていると見られててもおかしくない……!?
ガーンッと今更な事を思ってしまう。
ラファエル、絶対に街の人達の噂に上っているかも知れない、私の浮気みたいな事は耳に入れないでねーー!?
「………ソフィア様?」
「………ごほっ」
胡乱げな目で見られてしまった。
咳払いで誤魔化す。
「すぐにソフィーを知っている者達に探してもらって――」
「ソフィア様ならすぐに分かるのでは!?」
「なんで」
私、超能力なんて持ってないんですけど!?
「ソフィー殿は究極精霊の娘みたいな者でしょう!?」
「………」
何故それをヒューバートが知っている。
精霊とは知っていても、究極精霊がソフィーを精霊化させたことは知らないはずだ。
………ソフィーが話したのかな……?
彼らがいいならいいけども……
「親なら子の居場所って分かるものなの……?」
「分かりませんが、それが1番探し出せる方法かと思い、急いで帰ってまいりました!」
な、成る程……
「………一応周辺は探したのよね?」
「当たり前です!」
キッパリと言われ、私は1つ頷いた。
『究極精霊、ソフィーの居場所は分かる?』
『城下街から森の方へ移動している』
ヒューバートの予測通りに、究極精霊はソフィーの居場所が分かるらしい。
凄いね……
『森って、あの火山がある?』
『そうだ』
『移動速度は?』
『………馬車、だと思われる。周辺の精霊に追わせる』
『よろしく』
教えてくれた究極精霊に感謝し、私は腰を上げた。
「すぐに出る準備を。オーフェスはラファエルの所へ伝言に走って」
「はい」
オーフェスが部屋から出て行く。
「ブレイク、貴方は訓練場にいるアルバートとジェラルドを呼んできて」
「我に行かせて下さい!」
「分かってるわよ。戦力は多い方がいいから、ブレイクもドミニクも連れて行くわ。でも、誘拐だとすれば連携が必須になるから、オーフェスとヒューバートの2人と連携に慣れてる者が必要なの」
言えば少し納得いかないような顔をしつつ、頭を下げてブレイクが出て行く。
………私の所で武勲を上げても仕方ないと思うけれど……
そう思いながら私は寝室へと足を向けた。




