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第734話 バッドエンドはいりません㉓




ビキビキッと、急に地面が凍り始めた。

え…っと驚く前に、聖女が凍りついていた。


「「………」」


ポカンとラファエルと共に眺めてしまった。

氷に囲まれる聖女…

精巧な彫刻に見える。

………って、そうじゃない!!


「ちょ……!?」

「魔王! 人を凍りつかせるなど! 死んでしまう!!」

『大丈夫だ』


魔王が――おそらく魔法で聖女を浮かせ、回した。

ご丁寧に口と鼻は空気を吸えるように覆われていなかった。

ただ唇が紫色になり、青くなっていき、ガタガタと震えているため、すぐにでも凍死してしまうのではないだろうか。


「大丈夫じゃない! 凍死してしまう!」

『………軟弱な』


そういう問題じゃないと思う!!


『我が物顔で我が配下を使っていたのだ。なのにそんな軟弱なら、操る権利さえ持たぬ』


元々、操ることさえ許されない行為だ。


『もう充分待っただろう。これは持って帰る。いいな』


鋭い視線で見られ、ラファエルは渋々頷くしかなった。


『心配するな。生きたまま配下に身体を引きちぎられては再生し、永遠に生きた拷問をしてやろう。痛みが快楽になる者もいるしな』


想像するだけで私は血の気が引いた。

生き地獄を味あわせると言っているようなものだ。

震える手で、ラファエルの腕をギュッと掴んだ。

そうしなければ、立っていられないと思ったから。


「王女の前で血生臭い話は止めて欲しい。後は好きにしていいから、さっさと国から出て行ってくれないかな?」

『もう用は済んだからな。さらばだ』


一瞬にして魔王も聖女もいなくなった。

私はその場に崩れ落ちた。


「ソフィア!!」

「だ、大丈夫……」

「………大丈夫じゃないでしょ……」


地面にへたり込んだ私にラファエルが苦笑する。


「ぅ~………情けない……腰が抜けるだなんて……」

「大丈夫。俺もちょっと危なかったから」


………そう言いつつも、いつもと変わりないように見えますがラファエルさん……


「………ちゃんと生きてるのかな……」

「ソフィア。もう聖女のことは俺達の手を離れたんだ。考えなくていい」

「でも……マジュ国の魔王の住み家に着くまで生きておいてもらわないと困るでしょ? 魔王がまた来ちゃったら……」

「それはちゃんと計算していると思うよ」


ラファエルが私の足を掬って、姫抱きしてから歩いて行く。


「困るのは魔王なんだから」

「………そう、だよね……」


私はゆらゆらと心地よい揺れを全身に感じながら、そっと目を閉じた。


「………ぁ~……ドッと疲れた……」

「また精霊の力使ったもんね。いいよ眠って」

「………でも……」

「ソフィアは休むことが仕事です」


にっこり笑って言われ、私は苦笑した。

そしてお言葉に甘えて、意識を手放したのだった。


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