第731話 バッドエンドはいりません⑳
ラファエルがもう我が物顔で通信してくるよね…
ビックリして飛び上がる私を想像して、楽しんでいるとしか思えない。
「大丈夫ですかソフィア様」
「大丈夫よ」
現在私は庭園にいた。
勿論日課になりつつある庭園でのお茶会で、だ。
あわよくば庭園の花を台無しにした犯人の手がかりが、視点を変えたら出てくるかもしれない、とちょっと期待してはいるのだけれど。
そう簡単に見つかったら苦労はしない。
そんなのんびりのような、気を張っているような、どっちつかずの私。
その私に対してのあのラファエルの通信。
考え事してて声かけられたのと一緒だよね?
ビックリして飛び上がるよね?
私だけじゃないはずだ。
ラファエルとの通信が終わり、一先ず息を吐き出したところだった。
私の騎士達は、そんな私の奇抜とさえ思う行動を見ても、眉1つ動かさなくなった。
駆け寄ってくるぐらいはしようよ。
ゆっくり歩いて近づいてきたオーフェスが、真顔で大丈夫かと聞いてくるんだから……
ため息つきたくなっちゃう…
………まぁいいけど…
さて……
私はお茶を飲み干して立ち上がった。
「急いで部屋に戻るわよ」
「如何なさいました」
いつもはお茶を2・3杯飲んでから席を立つ私が、1杯で済ませたからか、眉を潜められる。
「ラファエルから連絡があって――」
そう言ってオーフェスの方を見た。
必然的に私の視界に王宮へと入る通路が目に映る。
「――最悪」
私の声色で、バッとオーフェスが振り向いた。
そこにはボロボロの着衣で、ボロボロの身体で此方に向かってくる1人の人間。
「………私、フラグ回収しすぎなんですけど」
「………お祓いに行きますか?」
「………神社なんてこっちにはないでしょ…」
思わず呟くと、背後でアマリリスもボソッと相槌を打ってきた。
ボロボロな姿で向かってくるのは、ラファエルから忠告された聖女。
どうやって逃げ出したのか。
「………アマリリスみたいに色仕掛けは通用しないはずなんだけど…」
「………姫様、サラッと致命傷与えてこないでください…」
「あ、ごめん」
つい前に脱獄したアマリリスが浮かんだから。
「見つけたわよモブ!!」
「………言い方…」
見た目ボロボロなのに、まだまだ元気なようだ。
指を指し、大声を張り上げている。
「………バカなのかな? 自分の居場所知らせるようなものじゃない?」
「………頭に血が上っているのでしょう」
「さすが経験者」
「………姫様、私をディスらないで下さい…」
「あ、ごめん」
現実逃避をした私達を余所に、ズンズンと正面きって向かってくる彼女は、すぐにオーフェス達に阻まれる。
………もうちょっとマシな人はいないのだろうか……
私はため息を隠さずついたのだった。




