第730話 バッドエンドはいりません⑲ ―R side―
「一体何をしていたんです!!」
執務室にルイスの怒鳴り声が響いた。
今回ルイスに怒鳴られたのは俺じゃない。
報告しに来た騎士に対してだ。
「「も、申し訳ありませんっ!!」」
ガバッと頭を下げる騎士達を見やりながら、俺は執務机に肘をついて手に顎を乗せている。
いやぁ……俺より先に怒ってくれるから楽だね。
「………で。見つかったのですか?」
「いえ……」
「他の者に伝えて手分けして探してもらってます。お――私達は急ぎ報告を、と……」
「何をやっているんですか! 逆でしょう!」
ルイスの言葉の意味が分からなかったのか、混乱している騎士達に俺はため息をついた。
「逃がしたのは君達でしょ」
「ら、ラファエル様……」
頬杖ついたまま、空いた手でスッと騎士達を指差す。
「君達が今頃がむしゃらに王宮を走り回ってなきゃいけないんだよ。なんで一番楽な報告に、しかも複数で来ているわけ?」
「「ひっ……!!」」
俺の顔が怖かったのか、ガタガタ震え出す騎士達。
失礼だな。
俺は笑顔を作ってあげているのに。
ガタイの良い騎士ら2人が今回の拷問係と、今回出入り口を見張っていた2人。
聖女の拷問の最中に、当の罪人である聖女を逃がしてしまったという。
………本当に何やってんだろうねぇ?
拷問続きで歩ける状態じゃないはずなのにねぇ?
計4人が執務室の扉の前に並んで、ガタガタ震えているのは実に不愉快だな。
「報告なんて1人でいい。それも逃がした奴らが来るな。最初に出会った者に私に至急伝言をと言い、今頃走り回ってるならまだ良かったんだけどね」
スッと立ち上がると、まるでその場に座り込んでしまいそうなほど、怯える騎士ら。
「私から聖女より酷い拷問を言いつけられるかい? それとも――今すぐ王宮を走り回って罪人を捕まえ、牢に入れてからお説教されるか。どっちが良い?」
言い終わるか終わらないかぐらいのタイミングで一斉に飛び出していった騎士達。
俺はすぐに精霊にソフィアに繋げてもらうように頼む。
『ひゃぁ!?』
油断していた可愛いソフィアの反応がすぐに聞こえ、思わず頬が緩んでしまいそうになる。
『ソフィア』
『な、なななな何!?』
『ごめんね。うちの無能な騎士が聖女の逃亡を許してしまったって』
『………は……?』
唖然としているのが目に浮かぶようだ。
だよね。
いつもだったら機械管理なんだけど、今回拷問、しかも女に、だったから逃げられるとは思ってなかったんだよね。
人ではなく、機械に全てやらせるんだったよ。
『ちょっと、警戒態勢でいてくれる? こっちは総動員で探すから』
『究極精霊にも行ってもらう?』
『いや。………王宮精霊に命じて総出で探すように、ってお願いしてくれる? ソフィアの精霊はソフィア自身の警護に』
『了解。ラファエル、怪我しないでよ?』
『大丈夫だよ』
『ん……』
ソフィアとの通信を切り、ルイスを見る。
「如何なさいますか?」
「俺はここから出ないよ。またまとわりつかれたら迷惑だから。その代わりルイスが行って騎士を総動員させて捜索してくれる」
「畏まりました」
ルイスが出て行き、俺は執務室の扉に鍵をかけた。
あの聖女が無理矢理ここへ来るかもしれないから。
「誰か来ても私に聞かずに追い返せ。ルイスが来たときだけ中に声かけて」
『『はっ!』』
扉の向こうを警護している騎士に言い、俺は自分の仕事に戻った。
あの聖女の考えそうなことは全て対策を考えないとな。
更新が遅くなってすみません。
1日毎に更新が難しくなっており、今後も少しずつ更新遅れが出ると思います。
重ねてお詫び申し上げます。
気長にお待ちいただければ幸いです。
神野 響




