第729話 バッドエンドはいりません⑱
「魔王が許可制箇所に無断で侵入、ね……」
ラファエルが休憩時間になって帰ってきた。
私はラファエルと昼食を取りながら、オーフェスからの報告を報告していた。
………報告を報告……いっそオーフェスに説明してもらったら良かったんじゃない?
気付いたときには遅かった。
まぁいいけど…
「いきなり姿を現すのは止めて欲しい、と言ってもあまり聞き入れてはくれないだろうね」
「やっぱり…?」
基本的に考え方が違うと思われる。
まぁ、これも見ただけ判断なんだけどね。
来たときの受け答えでは、正論を話していたから、話せば分かってくれるのだろうけれど。
チラッとオーフェスを見る。
「そういえば、オーフェスは魔王の言葉は理解できた?」
「いいえ。何を仰っているのか理解できませんでした」
その返答に1つ頷く。
「魔王の言葉は私とラファエルしか――あの時はアマリリスも理解できてたと思うけど……」
今ここにアマリリスはいない。
調理場へデザートの仕上げに行っている。
「………魔王が話したいと思った相手だけに、言葉を飛ばしているのかもしれないね」
………なんでそう感情を表してない顔をしてるのだろう。
戸惑ったりしていないのだろうか……?
「じゃあ、オーフェスとは話したくなかった、ってこと……?」
「話したくなかった、というよりかは……オーフェスが話を聞かないと思ったんじゃない?」
「え……?」
私はオーフェスを見る。
オーフェスは暫く考え、軽く頷いた。
「そうかもしれませんね。どんな言い分を聞こうが、ソフィア様とラファエル様の許可を貰ってください、としか言わなかったでしょうし」
あ、そういう意味での、話を聞かない、になるのか。
融通の利かない相手。
私の騎士としては非情に優秀だけれども、魔王にとっては厄介な相手、となる。
「で、ソフィアはどうするの? 許可するの?」
ラファエルに聞かれ、私は少し考える。
「………多分、許可しないだろうね」
「へぇ? なんで?」
純粋に聞いているのか、ラファエルはいつもの顔で聞いてくる。
「単純に、花壇を荒らされたくないから、だね」
何だかんだ言って、未だに花が枯れ果てた理由が分かっていない。
だから、今現在どうにも他人に立ち入って欲しくないのだ。
まだ見えないところに証拠があるかもしれないし。
「魔王が荒らすとは思えないけど? 興味ないと思うし」
ここに来て私はラファエルに、花壇が荒らされていたという報告をしていないことに気付いた。
けれども私の口からそれをラファエルに伝えることはなかった。
「でも、あそこは私の憩いの場でもあるから」
「そうだね。俺もあそこでソフィアとのんびりお茶するのが気に入ってるよ」
ふんわり笑うラファエルに、私も笑い返す。
「じゃあ俺もソフィアの許可が出るまで、他人に許可は出さないようにする」
「いいの?」
「いいもなにも、あそこはソフィアのモノだからね」
理解してくれるラファエルに、有り難く私は甘え、お願いしたのだった。




