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第728話 バッドエンドはいりません⑰




「魔王が庭園に?」

「はい」


起き抜け一番に、オーフェスからの報告を受けた。

起きてラファエルを見送り、着替えてソファーに座ったところだった。

私が起きた頃には既にラファエルが着替えて食事も終えたところで、寝過ごしたと慌てていて、ようやく一息付けるところだったのに。


「あの方が自由に姿を現せることは、最初に見た時から知っていましたが……」

「………そうね。いずれ指紋認証がいる、この(ある意味)禁域にも入ってくるかもしれないわね…」


神出鬼没。

魔王を表す言葉は、まさにこれだろう。

ラファエルから言ってもらえることが一番なのだけれど……


「………何処にいるか今も分からないのよね……」


温泉街にいるのか、ランドルフ国内を回っているのか、ランドルフ国外にいるのか。

食事の時間には大食堂にいきなり現れるらしいから、使用人達もそこから大忙しらしいし……

最初から言ってくれてたら、私もラファエルも大食堂に待機しておくのだけれど…

それは堅苦しいから嫌だという。

自由奔放過ぎる。


「………とにかくありがとう。私の庭を守ってくれて」

「いえ。当然のことですから」


オーフェスはいつもの無表情で首を横に振った。


「けれど、早急に何とかしなければ、知らぬ間に彼方此方を荒らされる可能性があります」

「………そこまで乱暴な方だとは思えないけれどね……」


机に並べられていくアマリリスの料理。

その動きに視線を向けながら考える。


「ソフィア様。あまり楽観視するのはどうかと」

「分かってるわよ。でも、私では判断しかねるわ。相手は王なのだから」

「………」


私の言葉にオーフェスが眉を潜める。

あ、今、「王太子に全て投げてやがる」とかなんとか思ってるわね。


「しょうがないじゃない。ここはまだ私の国じゃないんだから」

「何も言ってませんが?」

「口よりも目が語ってるのよ貴方は……」


はぁ……と、隠さずにため息をつく。


「サンチェス国だったのなら思いっきり意見してるわよ。お兄様に」

「………そこは王じゃないんですか」

「嫌よ。そんな事したら睨まれるじゃない。お父様の睨みは怖いんだから」

「………」


あ、オーフェスが否定しない。

そこは共感してくれるのか。


「更に国が絡むとお父様は容赦ないからこっちが負傷するわよ」

「王は手を出しませんが」

「言葉のアヤよ! 物理じゃなくて精神的によ!」

「そうですね」


あっさり同意しないで!!


「………まぁ、とにかくラファエルが休憩しに来たら伝えてみるわ」

「はい」


オーフェスが壁まで下がり、私はアマリリスの作った朝食に向き直った。


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