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第725話 バッドエンドはいりません⑭ ―R side―




「――な、にをしている……?」


目の前でがっちゃんがっちゃん、と物を散らかしている人物に声をかける。


「………ん? おお、人の王子か」

「………魔王、一体何をしておられるのですか」


ウェンにベッドから出ることを禁止されているソフィアを置いて、俺は研究室へと足を向けていた。

「ラファエルだけずるい!」とソフィアにはプクッと、頬を膨らませて拗ねられたけれど。

ウェン曰く「王女は大事だが、坊ちゃんなど動いて毒が回れば良い」と。

扱いが違いすぎて泣けてくるよね。

それもこれも解毒剤を拒んだ腹いせだろう。

ちゃんと飲んだのだから、広い心で受け止めて欲しいね。

まぁ、そんなこんなで許可が出ている俺は、久々に研究室へ行ってソフィアの好きそうな物を作ろうと思ったのだ。

毒を飲んでいるから念の為休み、暫く仕事は任せろとルイスに言われてるしね。

何を作ろうか、とウキウキと研究室の扉を開けたら――


足の踏み場もない散らかりっぷりが目に入ったのだった。


落ちているのは機械の部品だ。

それも完成していた物をバラバラに引きちぎったような……


「これすごいな。どうなっているのか見たくてな」

「………なら技術者に分解を頼めば良いでしょう。何故引きちぎって使い物にならないようにするんですか。賠償請求しますよ」

「む……すまん……」


無表情で見下ろすと、魔王は目を泳がせた。

………はぁ……


「ごめん。片付けと、組み立て前のやつ見せてあげて」


俺は技術者達に願った。

魔王が怖くて近づけなかった技術者達は、恐る恐るといった感じて近づいてくる。


「案内は――」

「………私がしましょう」


名乗り出てくれたのは、ここの責任者だ。

暗い感じの雰囲気に見えるが、口調はそうでもないのだ。

そういえば、ソフィアがくれたあの贈り物はこの責任者に作ってもらったと言っていたか。

それを聞いたときは、なんでよりによって男の技術者にお願いするかな。

更に後日技術者達に詰め寄って吐かせれば、2人密室内でコソコソやっていたらしい。

その後きっちりソフィアにお仕置きしたけどね。


「よろしく」


魔王を託せば頭を下げて去って行く。

俺はここの掃除からだな。


「ら、ラファエル様っ! 我々がっ!」

「良いよ。例え鉄くずになったとしても、この国を支えている収入源である機械の部品なんだ。足蹴になんて出来ないだろう?」


俺が言うと全員が一斉に頷いた。

やはりランドルフ国の者は、機械が好きなこともあり、部品を足蹴になど出来ないのだ。

丁寧に1つ1つ拾っていく。


「………これは……」

「ラファエル様?」


部品の一つを手に取ると、断面が気になって見つめてしまった。

技術者達に首を傾げられる。

コンコンと部品を叩けば、もろく欠片が落ちていく。


「………これ、魔王の力で溶けてるね」

「溶け……!?」


どうやって!?

技術者達が騒ぎ出す。


「暖水を冷水にする試作品だったよねこれ」

「そ、そうですっ」

「………もっと耐久性を研究しなきゃダメだね」

「分かりましたっ!」


意外なところで役に立ったのかな……?

いやでも、他国の特産品を壊すのはいくら王でも許されない。

やはり賠償請求しようか、と思いながら破片を拾い続けた。


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