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第724話 バッドエンドはいりません⑬ ―R side―

所用で遅くなりました。

申し訳ございません。




「ソフィア!!」


グッタリと俺にもたれ掛かって意識を手放したソフィア。

慌てて揺さぶろうとして留まる。

揺さぶって、毒が逆に回っても困る。


「ウェン!!」

「いやはや。度胸あるお嬢さんだのぉ」

「呑気にしている場合か!! お前の薬のせいだろうが!!」


睨むがウェンは堪えない。


「そもそも王女をお嬢さんと呼ぶな!」

「坊ちゃんとお嬢ちゃん、似合いだと思うがの?」

「そんな軽口叩いている場合ではありません! ウェン医師! ソフィア様は!?」


ルイスもウェンに食って掛かる。


「そう目くじらを立てるでない。全く……王女が飲んだのは解毒剤。坊ちゃんが王女に飲ませたのは、睡眠薬込みの口直しの飲み物じゃよ」

「………口直し? これが?」


俺は机に置いた残りの液体を見る。

どろっとして、何故か桃色。

口当たりが悪いんだが……

ペロッと急いで口に含んだために唇の端に付いたのを舐め取る。

………確かに甘い、か……?


「何が入ってるんだ?」

「トウを糖に混ぜただけじゃ」

「ぁぁ、あの果実と糖か。………まぁ、あの解毒剤だからこその甘すぎる飲み物か……」


はぁ……と息を吐く。


「………どうにかならなかったのかその解毒剤」

「なに。事情を聞いてのぉ。ちょっとした罰としようかと」

「ソフィアを勝手に罰したのか!? どんな権限があって!」

「医者の権限じゃ」


即答されて、俺は口を噤んでしまう。


「王族といえば――民にとって良い王族なら国になくてはならない者。そんな者が、普通ではない食事を気付いていて食べ続けていたなどと。そんな王族を、王家の体調管理を任されている筆頭医師である私が許すとでも思うのか」


ギロリと睨まれ、返す言葉が見当たらない。


「ラファエル様もですぞ。王女の食事を代わりに食べるなど。すぐに毒の種類が分かったから良いようなものの、分からなければ2人共が倒れることになった。その自覚はおわりか」


茶化すことなく、爺言葉でもなく、鋭く放たれた言葉は俺の胸を刺した。


「………すまん」


謝ることしか出来なかった。


「………全く……では、坊ちゃんもちゃんと飲んでくだされ。まさか王女である婚約者が飲んだというのに、拒否するような腰抜けではありますまい」

「うっ……」


ソフィアを引き合いに出すか!?


「先程も自分は逃れようとして。はぁ……情けない…」

「分かった! 飲むよ! 飲むから!」


ソフィアにも情けないと思われたら困る!!


「せめてソフィアを寝かせてから!」

「では待ちましょうかの。逃げられたら困るからのぉ」

「逃げねぇよ!!」


俺はソフィアをベッドに寝かせに行った。

その後飲んだ解毒剤は、やはり俺の心を砕いた。

ソフィア同様咳き込んだけれど、口直しを飲み、自力でベッドへと向かったのだった。


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