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第723話 バッドエンドはいりません⑫




解毒剤が出来たと、医師が持ってきた。

前に診てくれたウェンだった。


「ささ、ぐいっと」

「………」


目の前に差し出されるコップ。

………凄く、独特な香りがするんだけれど……

一口でも飲んだら、あの世へ逝きそうな……

………つまり、滅茶苦茶臭かった。


『いつもの解毒剤みたいなのはないの!?』

「………作れますが、7日は期限を頂きますぞ」

『なんで!?』

「ああいう解毒剤は臭いを軽減させるために、より時間をかけて作っておりますからのぉ」

『………そうなの?』


初耳だ。


「今回の毒の解毒剤を丁度切らしておってのぉ」


ふぉっふぉっと笑う初老医師。

………絶対に面白がっているとしか思えない。


「ソフィア」


ラファエルが近づいてくる。

臭いが目に染みて涙目になってしまったそのままに、ラファエルを見る。


「観念して飲んで」

『ラファエルは!?』

「俺は大丈夫だよ」


にっこり笑うラファエル。

………どうにか回避しようとしてない?


『ラファエルも毒飲んだでしょ!?』

「俺に症状は出てないからね」

『私も出てないよ!?』

「嘘つかない。喉がやられてるでしょ」


むぅ……っと頬を膨らませる。


「ほれほれ。ちゃんとラファエル坊ちゃんのもありますぞぃ」

「坊ちゃんは止めろ!!」

「何かと解毒剤を飲むのを回避しようとしている子供など、坊ちゃんで充分ですわい」


またふぉっふぉっと笑うウェンに苦笑する。

ウェンにかかればラファエルもやはり年相応に見えるから可笑しい。

2人が言い争っている(主にラファエルが食って掛かってるのだけれど)間、机に置かれたコップをじーっと見る。

………はぁ……

後にしても飲むのは変わりないよね…

7日後まで待って、もし何か異変があったらいけないし…

………というか、在庫はあると思うんだよね…

ウェンの表情を見ただけの勘だけど。

………これは食べ続けた罰かしら……

可笑しい…

私被害者なのに……

………でも、駄々こねてもいけないわよね……

………………………………よし!!

女は度胸!!


「「あ…」」


ガッとコップを掴んで一気に飲んだ。

ラファエルとウェンがポカンと私を見ていた。

最後まで飲みきり、こくんと最後の溜飲を終える。


「ごほっごほっ!」

「ソフィア!!」


ラファエルが慌てて駆け寄ってくる。

私は咳が止まらなくなった。

溜まっていた涙が頬を流れ落ちる。


「ウェン!!」

「お待ちを!」


慌ててウェンが何かを用意した。


「こちらをお飲みください!」


差し出されたものを受け取れず、ラファエルの腕の中で咳き込み続ける。


「ソフィア!!」

「ラファエル様、口移しで!」

「貸せ!!」


ラファエルが何かを受け取り、私の顎を取って口づけられ、その何かを口の中に流し込まれる。

ざらっとしたその液体は、なんだか甘かった。

けれど咳き込み続けているから、大半を零してしまったけれど。

そのまま私は意識を失ってしまった。


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