第717話 バッドエンドはいりません⑥ ―R side―
ソフィアを仮眠室へ見送り、扉が閉まったところで表情を戻す。
「アマリリスはこのままソフィアについていてくれる?」
「はい」
アマリリスが頭を下げて仮眠室へと向かった。
「ソフィア騎士達は扉の前で警護してて良いよ」
こくりと頷くのを見る。
「お前達は魔王の後を追って。大丈夫だと思うけれど、一応要人だからね。接待役が粗相をしないように。何かあれば報告」
「「「はいっ!」」」
俺の騎士達が慌てて出て行く。
………万が一粗相をして、ランドルフ国の民を攻撃されても困る。
まぁ、その場合はもう少しこっちが条件緩くなるだろうけれど……
マモノを殲滅したのは事実。
魔王が怒るのも無理はない。
俺の国の民が全滅させられたようなものだし。
………腐敗した貴族は別に構わないけれど。
善良な市民にまで手を出されたら困る。
………今はルイスが尋問しているところだろうし、報告を待って罰を決めないとな……
長くて1月の罰。
ソフィアが全て俺に任せようとするのには、心底呆れてしまった。
処分をこちらに押しつけようとしたことではない。
ソフィアが自分の怪我を、その原因――元凶を何とも思っていない風に見えたせいだ。
1番の被害者はソフィアなのに。
本当に自分に無頓着で困る。
………俺や自分の臣下が少しでも怪我すると容赦ないのに……
本当に、俺の可愛い可愛いソフィアを、どう教育しようか。
自分が怪我をしたら、それに相手がいれば、相手に対して怒りを覚えるようにする。
どうすればそうできるかな?
「失礼致します」
「あ、ルイス。お帰り」
あれこれ考えているとルイスが戻ってきた。
仕事をやっていない俺に眉を潜め、それから辺りを見渡してまた眉を潜める。
「例の方は?」
「………」
ルイスに聞かれて肩を竦める。
「温泉街に行ったよ。夕食は豪華にと要望された」
「………は?」
ポカンとするルイスに苦笑する。
「聖女引き渡しは最長1月以内。こちらでの刑が終わり次第引き渡すようになった。………多分、それまで魔王は滞在する」
「………魔王を接待……? 怒らせない可能性の方が低いと思うのですが……」
「同感だね。人とは違う感性の持ち主、とは話してた感じでは思わなかったけれど、何が逆鱗に触れるか分からないからね」
「………分かりました」
はぁ……とため息をつくルイスに、大いに同意できる。
「取りあえず、巡回騎士をこちらに少し融通するようにします。後――」
テキパキ動くルイスに微笑み、俺も魔王に対する対策を出していった。




