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第715話 バッドエンドはいりません④




魔王にどう返答するのか。

固唾を呑んで見ていると、不意にラファエルが私を見た。

え……


「………人側で、1番の被害はソフィアです」

「え……!?」


いやいやいや!

1番の被害はマジュ国だよ!?


「聖女が操り直接攻撃を受けたのはソフィア。他は逆恨みでの巻き込みになります」


………そう、なのか…?

確かに敵意を持って聖女が攻撃を仕掛けてきたのは私に対してだ。

その基準でいえば確かに私が1番被害を受けている。

………けれど、全体で見ればマジュ国だと思うんだけれども……


「ソフィアの希望を聞いてからの返答でも?」

『………まぁいいだろう』


無茶振り来ちゃった!?

魔王に睨まれているのに、こっちで聖女処分しちゃったら反感買ってサンチェス国もランドルフ国もヤバくない!?


「ソフィアはどうしたい?」

「………取りあえずわたくしはラファエル様にお任せする予定でしたので……わたくし自身を傷つけられたのは確かですが、被害を受けたマジュ国の民に対して償って頂ければと思っておりましたので……」

「………」


あ、ラファエルに冷ややかな目を向けられました。

罰することを丸投げにするな、ってことですね、分かります。

………分かりますけれども……

うわーんっ!

サンチェス国の国民を裁く権利があるのさえおこがましいのに!!

そんな権限いらないよー!!


「………とにかく、2度とこんな事を起こさぬように、徹底的に調きょ――性根――改心して欲しいとは思っておりますわ」

「調教して性根を叩き直したら良いんだね?」


………私が言い回し方を変えた意味は……

いや、つい口から出ちゃって慌てて言い換えただけだけれど……


「じゃあソフィアが受けた傷を倍にして返そうか?」

「………」


良い笑顔で言うことではない。

精霊のおかげで何とかなってるだけで、普通の女の子が受けたら多分死んじゃう……

聖女を殺したいとは思っていないから、やりすぎないでほしい……

ちゃんと生きて償って欲しいのもある。

命を奪ってはいおしまい、には絶対にして欲しくない。

マジュ国の民の命を危険に晒した罪は、そんな簡単に許されることではないのだから。


『………一理あるな』

「え……」

『王女とやらが言うとおり、簡単に終わらせるのは癪だな』


………普通に心を読まないで欲しいのだけれど…


『ではこうしよう。こっちで罰を受けさせ、それが終わり次第我の元に寄越す、というのは』

「………よろしいのですか?」


押し掛けてきておいて良いのか。

そうラファエルは言いたそうだった。

勿論私も疑問に思ったけれど。


『お前達の考え、そして力にも興味があったのでな』


………成る程。

だからここに姿を現したのか……

即地下牢に行かれなくて良かった。

速攻で聖女を殺されれば、私達の気持ちは何処に向ければいいか分からなくなっただろう。


「分かりました。期限はいつまでにとかありますか?」

『そうだな。我も気が長い方ではない。………長くて1月でどうだ』

「充分気が長いと思いますよ。分かりました。終わり次第連絡を入れたいと思いますが、どのように――」


ラファエルの言葉の途中で魔王が動いた。


『では我は温泉とやらにでも浸かりに行ってくる』

「「………は?」」


話は終わった、という風にスクッと立ち上がった魔王は、スタスタと扉へ向かう。

ポカンとして私とラファエルはその背を見る。


『夕食は豪華に頼むぞ』


嬉々として出て行った魔王をつい見送ってしまった私達は、互いに顔を見合わせる。


「………ここに滞在、ってこと……?」

「………みたいだね……」

「………温泉の存在、なんで知ってるの? 今日封印が解けた……んだよね……?」

「………魔王だから……?」


何故こんな事になっているのか。

私達は同時にため息をついたのだった。


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