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第711話 戻ってきてない日常




休憩を終え、仕事に戻ったラファエルの姿を飽きることなく見る。

そのせいでいつもより注意力散漫になっているラファエルに、ルイスの鋭い言葉が突き刺さる。

私もルイスに小言を言われるけれど…


「暫くラファエルを堪能してないから」


と悪びれもなく言った。

盛大なため息が返ってきましたけれども。


「だよね! 今日帰ってきたばかりなんだからちょっとぐらい休暇をもらっても罰は当たらないと思うんだよね!」


ラファエルは便乗してくる。


「………先程、優先すべきはランドルフ国民だと、ご自分で仰ってましたよね?」

「………」

「仰ってましたよね?」

「………言ったね」

「では、止まっていた民のための仕事を片付けましょうね」


言いくるめられたラファエルは、渋々仕事に戻った。

そんなやり取りも楽しくてくすくす笑う。


「失礼します!」


そんな雰囲気をぶち壊してくれるのは、焦っていくつかの工程を無視して入室してきた騎士だ。


「マジュ国聖女が暴れて、牢の管理機械が故障していってます!」


バキッという音が聞こえたのは、聞かなかったことにしよう。


「………あの女ぁ……!」


地を這うような声で、怒りがMAXになっているだろう雰囲気にも、気付かなかったことにしよう。

私は騎士に視線を向けていて、心底良かったと思えた。

なにせ、今ラファエルを視界に入れてしまったら、多分私気を失いたくなるだろうから。

実際は気を失えないんだろうけれど。


「何処まで俺とソフィアのイチャつく時間を潰せば気が済むんだ……!」


………ぁ、そこ……

思わずラファエルを見てしまいそうになった。

いつものラファエルだった、と気を抜きそうになった。


「ラファエル様、顔が残念なことになってます」

「顔が残念ってなんだ。まぁ、ソフィアだけに褒められたいから、ソフィアの好みの容姿だったら何でもいいけど」


………さり気なく照れること言わないで!?


「もう放っておいて凍死すればよくね? 牢は構造上寒いままだし。自分で温度制御などの機械も壊してるんだろ?」

「罪人を牢で死なせるのは醜聞が悪いです」

「じゃあ、身動きできないようにして北に埋めてくる?」

「それも醜聞が悪いです」


………醜聞の問題ではないと思う。

話をしながらテキパキと机を片付けて立ち上がり、行動するのはいいけれども……


「ソフィアはここで待っててね」

「………お気を付けて…」


私は快く送り出した。

ついて行けやしないでしょ。

今のラファエル、怖いし。

口に出したらもっと怖くなるから言えないけれど。

………もう聖女問題、なくなって欲しい……

そっと私は息を吐いたのだった。


※予告※

いつも「転生したらモブはモブでも王族でした」をお読み頂き、ありがとうございます。

明日の更新は、都合によりお休みさせて頂きます。

次の更新は明後日の予定ですが、間に合わなければしあさってになります。

楽しみにして頂いている方、申し訳ありません。

次回の更新をお待ち頂けたら幸いです。

神野 響


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