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第710話 許してはいない




やはりラファエルが言った「帰る」は、ランドルフ国へ、という意味で…

現在ランドルフ国王宮でございます。

ラファエルのレッドで帰ってきましたよ~

私は暫く力を使うなと言われて、外出も不可です。

ちびちびと用意されたお茶を飲みながら、ラファエルの仕事する姿を眺めております。

帰って早々私はラファエルによってラファエルの執務室へ連れ込まれました。

1人にしておけば、絶対に動くからって。

何処まで信用できないのだろうか。

日頃の行いでしょうけれども。

さすがの私もあんな激戦繰り広げた後で、お転婆行動取りませんよ。


「よし。これで終わりだな」

「はい」


ルイスとのやり取りで、ラファエルが帰ってきてから休まずやり続けた仕事は、一段落したようだ。

立ち上がってラファエルが私に近づいてくる。


「ソフィア食べてる?」


首を傾げながら聞いてくるので、私は頷いた。

目の前に並べられた甘味。

疲れただろうからって、アマリリスに用意させて作らせた甘味。

………ラファエルって、やっぱり私の侍女に命令するのが自然になってるよね?

別に止めることはないけれど。

隣に座って甘味に手を伸ばすラファエルの横顔を眺める。


「なに?」


微笑んで見てくるラファエルは、今日もイケメンです。

動き回ってヘトヘトのはずなのに、いつも通り仕事を片付けられるラファエルさん、尊敬します。

どんなに疲れてても格好いいご尊顔、羨ましい限りです。


「………ガイアス王太子、連れて来なくて良かったの……?」


彼の罪に対する罰はまだ完遂されていない。

追いすがるガイアス・マジュを放って、帰ってきたのだ。


「あの状態で、あの王と王妃がいる国で、後始末をする王族がいないのは問題だからね」

「………そうね」

「まだ散った各地のマモノの殲滅も必要だろうし。あのまま連れてきてまたこっちにとばっちりが来たら嫌だ。罰より自国の問題解決に駆けずり回ったらいい。あれだけ手助けしてやったんだから」


そうか……

まだ各地にいる民は危険なんだ。

でも、もう私達が踏み入れる理由はないから、私達が動くことはない。


「後はマジュ国の問題だもんね」

「そう。俺達に助ける義理はない」


冷たい言い方だけれど、同盟国でも何でもないマジュ国相手に、民1人1人の安否の為に駆けずり回る責任は何処にもない。

私とラファエルには、最優先にしなければならない自国民の民がいる。

その民を見捨てて他国の人間を助ける義理も義務もないのだ。


「………ふふっ」

「どうしたの?」


つい思い出し笑いをしてしまった。

そんな私を見て、不思議な顔をされる。


「………いやね、前にガイアス王太子が、あの人より私の方が聖女だと言われたら納得する、って聖女に言ってたじゃない?」

「ん……? ………ぁぁ、確かにね?」

「でも、私はランドルフ国とサンチェス国の国民のことで手一杯だし、今ラファエルが言ったマジュ国にまだ魔物がいるって言われても、ラファエルが私達に助ける義理はないって言葉にも、全く異論がなくて」

「そりゃそうでしょ。ソフィアはサンチェス国王女なんだから」


肯定するラファエルに私は微笑む。

それが当然、と言ってくれる。


「私の中の聖女の定義って、疑うことを知らず、慈善事業が当たり前で、誰にでも平等に、っていう感じなのね?」

「………そんな人間、気持ち悪いだけだよ」


………容赦ない。

でも、そんなラファエルも好きだ。


「私は絶対に当てはまらないなって」

「当てはまらなくていいよ。ソフィアは今のまま、俺の隣にいればいい。そんな気持ち悪い善人みたいになったら、男にも分け隔てなくでしょ? そんなの嫌だし」


ムスッとしてしまったラファエル。

まさかのそっち系でしたか。


「嫉妬する?」

「しない方が可笑しいでしょ」


むくれたまま私はラファエルに抱きしめられ、私も笑ってラファエルの背に腕を回した。


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