第708話 マジュ国⑬
魔物を半数ほど減らした時、空気が変わった。
生存本能のせいなのか、魔物の目がギラついている。
そして――
「ソフィア下がって!」
今まで精霊だけに向かっていた魔物達が、私達人に視線を向けて、無差別に向かってきたのだ。
ラファエルにドンッと肩を力強く押され、私の身体は後退し、いきなりだったから勢いを殺すことは出来ずに下がりながら尻餅をついてしまう。
「いっ……!」
痛みに顔を歪めてしまうが、ハッとラファエルの方を見ると、魔物が次々とラファエルに向かって飛びかかってきていた。
「ラファエル!!」
「くそっ!」
咄嗟にラファエルは剣を抜き、魔物を斬り捨てていく。
けれど斬っただけでは魔物は消滅しない。
その場凌ぎになっているだけ。
「っ……!」
もう私は力を温存するなんてこと言ってられない。
『全員、出し惜しみなし! 全力で魔物排除!!』
『『『『了解!』』』』
『『『『はい!』』』』
精霊達の攻撃が勢いを増す。
優先的に人に向かって行っている魔物達を攻撃してくれている。
『………我も出るか?』
『火精霊が出て行ったら私が力を使えないからダメ!』
私はラファエルの周りにいる魔物に向かって手を翳した。
意味を理解してくれた火精霊は両の手から炎を出してくれる。
その炎はまるで意思を持つかのように、魔物に向かって右往左往し、確実に当たっていく。
ラファエルに直撃、なんてことはない。
上空からは天変地異のように色々な攻撃が降ってくる。
騎士に扮している精霊達は魔導士のような力を出している。
私とラファエルは手の平から魔法を出している。
回復して攻撃に戻ってきている魔導師達が、思わずポカンとしてしまうぐらいに、私達は好き勝手に動いていた。
『………まさにファンタジー……』
『主、集中しろ』
『………すいません』
思わず遠い目になってしまった私に、火精霊が突っ込んでくる。
私は戦いに集中するために1度首を振った。
「ソフィア体力は!?」
「まだ元気!」
「ホントに!? 随分力使ってるでしょ! 嘘ついたら仕置きだよ!?」
「ホントだよ! 身体に異常はないよ! 違和感もないもの!」
次々と攻撃をしながらそんな会話をする私とラファエル。
「それは気分が高揚しているからじゃないの!?」
「そんなはずない――と、思うけど…」
自信はない。
急にスコン…と意識を失ってしまうかも。
「でも出し惜しみしてたらラファエルも私も死んじゃうよ!」
「っ……本当に無理だと思ったら下がるんだよ!」
ラファエルもこの状況は厳しいと考えたのだろう。
納得はしてないけれども許容した。
「分かった!」
私は頷いて、攻撃を続けた。




