第707話 マジュ国⑫
火精霊から飛び降りたけれど、風精霊が助けてくれて無事に着地。
――出来たけれども、目の前には色々な姿の魔物がいる。
狼みたいなのや猿みたいなもの、ファンタジーの王道のゴブリンやオークみたいなの。
スライムっぽいのは見えない。
プリンみたいなぷるんぷるんの身体見てみたいけど。
『火精霊! 炎!』
思うだけで両手から炎が出て、目の前の魔物達を消していく。
「ガイアス殿! 怪我人下がらせて治療できるならして!」
「し、しかし…!」
「足手まとい!!」
………ラファエルが容赦ない…
まぁ、怪我人を庇いながらは、集中できないからキッパリ言った方が良いかもね。
「急いで!」
「わ、分かった!」
ガイアス・マジュが指示していって、怪我人が次々と運ばれていく。
「ソフィア! 無理しないでよ!?」
「努力します!」
声が飛び交う中で、ラファエルも声を張り上げ私に言ってくる。
私もそれに大声で返した。
半分の精霊が次々に力を使って魔物を滅していっている。
よって、私の魔力だか精神力だかが削られていっているだろう。
こんな時、ファンタジーならステータスぐらい見れたらいいのにね!
何処がどう減ってるのか分からないよ!
自分の感覚では全く以て分からない。
だから注意しようがない。
いきなり倒れてしまう。
アラームとか鳴って欲しいよね!
人型になって攻撃している精霊に魔物達は群がり、楽に倒せている。
ちなみに火精霊だけが今私の中にいる状態だ。
ラファエルは色々な種類の攻撃を手の平から出している。
緊急事態だから出し惜しみはしない。
「ソフィアは俺の後ろにいて。彼らだけで大丈夫でしょ。火精霊の力まで使って、余計な体力減らさなくていい」
ラファエルが私を背に庇って攻撃を続ける。
「え……でも……」
「いいから」
強く言われ、私は頷くしかなかった。
従わずに無理矢理使って倒れたらそれこそ説教コースだ。
「………でも、こんな大量のマモノ、どこから……」
「あの山が見えますか?」
怪我人を運び終えたガイアス・マジュが私達に合流してきた。
服はヨレヨレで、表情からして身体はボロボロで、それでも瞳は力強さを持っていた。
ガイアス・マジュが指差した方向に、確かに山がある。
「あの麓に、魔物が発生する何らかの原因があるんです。そこから魔物は一定に生まれてきます。けれど、急に魔物がこれだけ増えるのは異常です」
精霊に魔物が集中し、そして精霊が容赦なく一気に消していっているために、ガイアス・マジュは杖を下げたままだ。
息が切れて苦しそうだから、もう魔力が残ってないのかもしれない。
「………聖女がマモノを操ってソフィアを攻撃してきたんです」
「アイが!?」
「聖女の力とやらでマモノを操り、ソフィアは怪我を負わされました。リーリエ王女に癒してもらいましたが」
「申し訳ない……本当に迷惑を……」
「それだけならまだ良かったんですがね」
ラファエルはマジュ国王と王妃に言われたことをガイアス・マジュに伝えた。
ここの魔物を片付け脅威が去った瞬間に、ランドルフ国とサンチェス国はマジュ国と一切関わらないこと。
何かあれば敵対することを。
「なっ……!? そ、それは困る!! お願いします! 考え直して頂きたい!」
「貴方は王太子だ。この国の王ではない」
「っ……」
「王としての返答がアレだったからね。一切交流は持ちたくない」
「ま、待ってください! 必ず王を説得します! どうか、判断はそれからにしていただけないか!?」
ガバッと真っ青な顔で頭を下げるガイアス・マジュ。
ラファエルはそんなガイアス・マジュを見ても、眉1つ動かさなかった。
「………今はマモノの殲滅が先です」
ラファエルは是とも否とも告げなかった。
私も返答は避けた。
グッと唇を噛むガイアス・マジュを尻目に、私達は戦闘に戻った。




