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第705話 マジュ国⑩




マジュ国城を早々に後にした私達。

あんな王達がいる場所で、ゆっくりしてはいられないと判断した。

ラファエルの騎士の半分がランドルフ国へレッドに乗せて罪人を連行していったのを見送り、私はラファエルを見上げた。


「………どうする?」

「取りあえず残りのマモノを何とかする」

「………いいの?」


そう問いかければ、苦笑が返ってくる。


「ああは言っても、ランドルフ国とサンチェス国に害と分かっていて、何もしないわけにはいかないから」


ラファエルの言葉に、私は静かに頷いた。


「操っていた聖女は捕らえた。もう増えることはないだろうから、殲滅するだけで脅威は去るよ」

「そうね」


複雑だけど……


「………そういえば、ガイアス様は見かけなかったわね」

「………そう言われればそうだね」


ふと、いるだろうと思っていた人物がいなかったのが気にかかった。

ラファエルも忘れていたようで、あ…という顔をする。


「何処に行ったのかな……」

「………取りあえず移動しよう。この辺にはいたくない」


心なしか城内が騒がしくなった気がする。

………追っ手かな?


火精霊ホムラ!」

『………』


無言で出てきてくれた火精霊ホムラ

乗り物化が定着してごめんね。

そう心の中で謝りながら火精霊ホムラに乗り込み、その場を後にした。

その直後、ドンッという音が聞こえ、地上を見下ろした。

さっきまでいた場所にクレーターが出来ていた。

ゾッとする。

後少し遅かったら、木っ端微塵だったかもしれない。

続々とローブを着た魔導士が城から走り出てきてこちらを見上げていた。


「………あんなにまだいるなら各地に送り出せよ、って思うのは私だけかしら……」


思わず遠い目をしてしまった。


「俺も同意見だから気にしなくていい」


ラファエルと同じ感想で良かったよ。


「ソフィア様!」


騎士の声が聞こえ、慌てて視線を向けると、魔導士が放った攻撃がこちらに向かってきていた。


火精霊ホムラ!!」

『わかっている!!』


危なげなく火精霊ホムラは軌道修正してくれ、ホッと胸をなで下ろす。


「………リーリエ王女が紹介して、王太子と王女って知ってるはずなのに……」

「マジュ国内なら何をしてもいいと思っている連中なんだろ」


………ぁ、もうラファエルさんの表情が無になっていた。

相当お怒りのようです。

私はそっと進行方向へ視線を向けた。


火精霊ホムラ、魔物が多そうな所へ飛んで」

『わかった』


火精霊ホムラに進路は任せ、私はそっと背後にいるラファエルに寄りかかった。


「………ん? いきなり甘えただねソフィア」


すかさずラファエルは私の腰に手を回してくる。


「………ごめん」

「謝って欲しいわけじゃないよ。どうしたの」

「………ちょっと、拍子抜けしちゃって……あんな王と王妃だったとは思ってなかったから……」

「そうだね」


腰を抱いてない方の手で頭を撫でてくれる。

その気持ちよさに微笑んでしまう。


「マジュ国はその力故に色々俺達の常識とは違うのかもね」

「力……魔法で何でも出来ちゃうから…?」

「人より優れているというだけで、勘違いする者は多いからね」

「………そうだね」


それは、何処に生きる人の中にもいるだろう。

出来るから、他人を見下してしまう。

出来ない人を嘲笑う、とか。

………私の世界の人の中にもいたなぁ……

何処に行っても変わらないのだろう。

そういう人の考えを正す、もしくは関わり合いにならない。

私達は先程後者を選び、そしてこれからも。

もしも聖女を取り戻すために立ち上がるのなら、敵対する。

その覚悟はもう、ラファエルの中にはあるのだろう。

そして、私の影達がおそらく自主的に動いてサンチェス国へ報告しに行った。

お父様とお兄様の判断も、多分ラファエルと同じになるだろう。

………私が軽んじられた、イコール、サンチェス国を軽んじたのだから。

私はラファエルに寄りかかったまま、そっと目を閉じた。


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