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第704話 マジュ国城②




リーリエ王女に連れられ、私達は移動した。

次に見えたのは先程の広間より一回り大きい広間だった。

また空間魔法で移動させられたのか、と思って唖然としたのは一瞬。

奥に2人の人物が見え、すぐさま礼をした。

隣にいたラファエルも、騎士達もそうしていた。


「ただいま戻りました。陛下、王妃」

「………よく戻った。と言いたいところだが、お前はガイアスの事後処理の後、他の国に行けと命じたはずだが?」

「他の国では殿下達が対応しています。わたくしは国の一大事と聞き、戻ってまいりました」

「………余がそれを命じたか」

「………いいえ」

「ふん。使えぬ王女め」


………カチーンッと来てしまった私は可笑しいのだろうか?

自国民があんな事になっているのに、何故王も王妃もここでのんびり座っているのだろうか。


「この国のことは部下に任せている。お前はさっさと――」

「お言葉ですが陛下!!」


リーリエ王女が王の言葉を遮って声を上げた。


「この国の魔物増加は、聖女が元凶でした!! それどころか、最初に結界を消滅させたのも彼女でした!!」

「………それがどうしたというのです?」


王妃の言葉に私は目を見開いた。

………なんと言った……? と頭で理解が出来なかった。


「聖女はこの国にとって大事な存在。その者が起こしたことは咎めぬよう、王家代々伝わる書物に記載があります」


………なんだその理屈。

なら聖女が犯罪を犯しても、裁かれないということなのか。

ふつふつと怒りが湧いてきた。

私はともかく、ラファエルにも危害を加えようとしていたのに。


「な……何を言っているのか、分かっておいでなのですか」


ギュッとリーリエ王女が拳を握った。

………彼女はまともで少しは良かった、と言えばいいのだろうか……?


「早くお前は他の連中の手伝いをしに行け」

「他国の王族を傷つけて、無罪放免にはさせません!!」


バッと顔を上げてリーリエ王女が抗議を続ける。

王と王妃の間違った言葉に従ってはいけない。

………この2人が親ならば、ガイアス・マジュがああ育ったのも無理はない。

そう納得してしまう。


「………他国王族だと?」

「我が国が危ないと知って来てくださったのです! ランドルフ国王太子・ラファエル殿下と、サンチェス国王女・ソフィア殿下です! 彼らに聖女は危害を加えたのですよ!?」

「………」


ジッと見られている気配がする。

許可は得てないから顔はまだ上げられない。


「………マジュ国内ではマジュ国法を優先する」

「そんなの許されるはずがありません!! 他国の方がいらっしゃる場合は、共通規約が絶対です!!」

「くどい!!」


ピシャリと言われた言葉に、スッとラファエルが身を起こした気配がした。


「ほぉ。………マジュ国はランドルフ国とサンチェス国を軽んじたと見なします。両国と事を構える、ということでよろしいですね」


疑問符ではなく言い切ったラファエル。

私もそっと身を起こした。


「なっ……何故そうなる!!」

「分からないなら愚王です。こちらに拘束してある聖女はランドルフ国へ送ります。被害者がいる。このままなかったことにしようとする愚王に渡す気は更々ありません」

「そんな勝手なことを!!」

「勝手をしているのは貴方方です。共通規約を平気で破る。そんな国を救う気も無いですしね」


ハッとリーリエ王女がこちらを向く。

今後、2国の支援が受けられない。

つまり――


「わたくしも、正式に抗議させて頂きます。サンチェス国は、今後一切マジュ国への食流通を停止させます」


ガタンッと王と王妃が立ち上がったけれど、私はラファエルに促されるままその場を立ち去ろうと足を動かした。


「ま、待てっ!!」


引き留める声がしたけれど、無視した。

広間を出て扉を閉めた。

リーリエ王女は私達を追ってくる。


「お待ちくださいませ!」

「………申し訳ございませんが、わたくしも身分ある者として、あのお2人のお言葉は許せませんの」

「分かっております」

「………マジュ国の民へは申し訳なく思うのですが、同じ様なことがあって他国民へ慈悲の無い言葉を放つ王を持つ国は、いずれ姿を消すでしょう」

「………」


歯を食いしばるリーリエ王女。

あの両親がいて、彼女が常識人なのは奇跡かもしれない。

………いや、人の振り見て、なのかもしれない。

反面教師みたいな。


「聖女のことはお任せします。わたくしに、王と王妃の件はお任せ頂けないでしょうか」

「………任せるよ。そっちは私達の領域じゃない」


ラファエルの言葉にリーリエ王女は頷き、聖女はラファエルと私の精霊でランドルフ国王宮へと送ることになったのだった。

………ゲームのモブなんだろうけれど、作り込みが甘いと言わざるを得ない謁見で、私はドッと疲れてしまったのだった。


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