第695話 マジュ国②
街の中心部に向かえば、そこに小規模な結界が張られており、その中に住民達が避難していた。
全員で協力し、張っているようだった。
怪我人もかなり出ていて、無傷の人の方が少ないようだ。
私達に怪我を治す力はない。
この件に関しては役に立ちそうにない。
魔物達は火精霊と雷精霊に向かっていっているようで、この辺りにはいない。
「すぐに治療しますわ!」
先に着いていたリーリエ王女が、魔導士に指示して共に治療魔法を使用。
ガイアス・マジュの姿はない。
「………単独行動。あまり褒められた行為ではないな」
ラファエルの呟きに私は頷いた。
「ソフィアのおかげで精霊達がマモノを引きつけてるね」
上空に舞っている火精霊達は見えないはずなのに、ラファエルが上空を見つめる。
誰か目になっているのかな?
「リーリエ王女」
ラファエルがリーリエ王女に声をかける。
「私とソフィアは殲滅に向かうね」
「あ……でも……」
「ここにいても役に立たないから」
ラファエルは私の手を引いてまた駆け出した。
返事を聞く間もなく。
あえて、かも知れないけれど。
さっきの順番で走って行く。
街を走り抜け、平地に出れば、魔物達の群れを発見する。
その真上に火精霊と雷精霊が見えるから、国中を回って集めてくれたのかもしれない。
見えている範囲では、集まっている魔物以上に増えている様子はない。
「ソフィア、いける?」
「大丈夫!」
ラファエルがユーグに指示を出しながら私を見てくる。
それに頷き、私は空を見上げた。
「雷精霊! ユーグが水を浴びせたら雷を!」
『畏まり』
ユーグの手の平から大量の水が放出された。
手前の方の魔物だけにかかっただけだけれども、それが地面を伝い、平原を水浸しにしてしまう。
火精霊が急降下してきて、私達は掬い取られ、上空へと誘われる。
魔物達全ての地面に水が溜まると、雷精霊が雷を落とした。
ピシャンッという爆音と共に、辺り一面黒焦げになってしまった。
多分、それをハッキリ一部始終見ていたのは私だけだろう。
みんなは急に身体が浮かんで空に舞い上がっている為に混乱している。
火精霊は私にしか見えていないから。
何かに乗っている感覚はあるだろうけれど。
「………ソフィア」
「ん?」
「騎士達にも見えるようにしてあげて……」
ラファエルに切実に言われてしまった。
………そりゃ透明だから、足もとに遠ざかる地面が映っているだろうからね…
「火精霊」
『………遊び心がない連中だ』
………いや、そういう問題じゃないと思うけどね…
取りあえず、騎士達に見えるようにしてもらった。
「ユーグの手助けあったから、大丈夫かな?」
「うん。体力もまだまだあるよ」
私はラファエルに向かって頷いた。
そのまま私達は火精霊に乗ったまま、マジュ国を回ることにした。




