第693話 マジュ国へ
ラファエルが着替えてくるのを待って、私達は王宮の門の方へと向かった。
門には既にリーリエ王女と、上から下までローブで身体を覆った男女2人、そしてガイアス・マジュ。
………ん?
「ガイアス殿下もご一緒するんですか?」
ラファエルを見上げて聞く。
一応余所行き口調でございます。
「だって自国の問題だしねぇ」
ラファエルが笑みを浮かべ、半目でガイアス・マジュを見ている。
迷惑と思っているのがありありと伝わってくる。
実際、マジュ国の問題、と片付けていいことだったしね。
でも結界がまた破られそうならば、こっちも被害が出てくるから、そうなって欲しくないということで同行する。
魔物ホイホイで何処まで楽できるだろうか。
「………いっそマジュ国ごとぶっ飛ばしたいな……」
彼らに聞かれないように小声でラファエルが呟いた。
………危険思想になっているラファエルの為にも、頑張らなければ……
ラファエルが捕まっちゃうよ……
「ルイス、後頼む」
「はい」
ルイスが頷き、頭を下げて見送り体勢になる。
ランドルフ国からラファエルと私。
そしてラファエルの騎士と私の騎士のみ同行する。
これは私達の契約精霊のことを知っている最小限の人数だ。
「ソフィー、私のいない間、教育は任せるわ」
………まぁ、今までも任せっきりだったのだけれどね。
「はい。お気を付けて」
ソフィーも頭を下げて見送り体勢。
「ではラファエル殿下、ソフィア王女、わたくしの転移魔法でマジュ国へ参ります。出国手続きは不要ですわよね?」
「こちらでしておきます」
ルイスの言葉にリーリエ王女が頷き、私達はリーリエ王女に近づく。
「離れないようにお願いします」
その言葉を聞いて私はラファエルに抱きしめられる。
「ら、ラファエル?」
「………万が一はぐれても、俺とソフィアはバラバラにならないように」
………それもどうなのだろうか?
私とラファエルはマジュ国に行ったことはない。
地理に詳しいリーリエ王女達から離れたらいけないのでは……?
「俺が大事なのはソフィアだからね」
………マジュ国を助けることで、最終的にランドルフ国とサンチェス国を守りに行こうとしているのに…
「………いいですか?」
ほら!
リーリエ王女に呆れられてるから!!
ぐだぐだ感が消えないうちに、私達はマジュ国へと向かったのだった。
グンッと何かにつり上げられているのような感じがし、身体全体が浮いた。
思わず目を閉じる。
もう少し長い時間だったのならば、多分吐いていた。
足がしっかりと地面に付いた感触がして、目を開いてキョロキョロと周りを見渡す。
「………これは酷い」
頭上からラファエルの声が聞こえた。
見上げることも出来ず、私はグッとラファエルの服を握りながら、マジュ国であるだろう土地を見つめる。
わなわなと唇が震える。
「た、みは……? 民は生きているの!?」
リーリエ王女が不法侵入しただろう魔導士たちを問い詰める声が、酷く耳に残った。




