第692話 侵入者⑤ ―R side―
急ぎ足でソフィアの部屋へと向かった。
いつも通りにノックもせずに扉を開ける。
「あ、ラファエル」
「………」
普通に出迎えられる。
そう思っていたのだけれど…
「………なに、その格好…」
ソフィアは如何にも“出かけます”という格好だった。
普通のお出かけ用のドレスではなく、パンツ姿だった。
いつものソフィアのいう“ジャージもどき”ではなく、騎士達が着ている服に似ている。
「え? だってラファエルが私とマジュ国に行くって」
………精霊か。
「また覗き見してたね……?」
「ううん」
ふるふると首を横に振るソフィア。
………違うの?
「みんなが教えてくれた」
………この場合のみんなとは、ソフィアの契約精霊だという契約精霊だろう。
「緊急だって言うから、準備万端で待ってた」
「………うん、取りあえずそれはいいとして……」
俺はソフィアを上から下まで眺める。
「………それ、どうしたの?」
「これ? 密かに作って貰ってましたー!」
良い笑顔で両腕を広げるソフィア。
………可愛すぎか。
「ちゃんとラファエル付きの騎士達と同じ様な色にしてもらったんだよ?」
そこは全く同じじゃないんだ?
確かに俺付きの騎士は王宮騎士の制服とは分けているけれど。
「私はラファエルの護衛じゃないから、全く同じはどうかと思って。それに動きやすいように飾りは外してもらってるし」
…まぁ、王太子付きともなれば、見栄えも大事だから、結構邪魔なもの付いてるしね。
「ラファエルの服にも合うように考えたんだよ!」
………これは、俺に対するご褒美ですか?
ソフィアが可愛すぎて辛い…
「戦闘の時、ドレスじゃ走れないし」
そうだね。
「パンツ姿のソフィアも可愛いよ」
途端に顔を赤くするソフィア。
いつになったら慣れるんだろうね?
「じゃあ、準備万端だね。体調は?」
「バッチリですっ!」
胸元で拳を握ってキリッと見上げてくるソフィア。
………俺を殺す気か。
可愛すぎでしょ!
「………また倒れちゃうかもしれないけど、ホントは行かせたくないけど、一緒にマジュ国に行ってくれる?」
「行く! だって、またマジュ国の魔物がランドルフ国とサンチェス国に来たら、今度こそ民が傷ついちゃうかもしれないから」
真っ直ぐに見つめてくるソフィアに苦笑する。
ホントに、自分のことなんて考えないんだから…
王族としては当然なんだろうけれど、ちょっとは俺の心配も受け入れて欲しい。
「ラファエルも国民守って傷ついちゃうかもしれないし! それが1番嫌!」
………ソフィアが時々油断してるところに爆弾落としてくるから、油断も隙もない。
「俺が傷ついたら嫌?」
「決まってるでしょ!?」
「ならソフィアも、俺の心配も受け入れて少しは自重しようか」
「うっ……」
ソフィアが俺の言葉に固まったところで、俺は準備をしに部屋を出たのだった。
今日も俺のソフィアが可愛くてなによりだ。
絶対に今度は守るから。




