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第663話 王族主催茶会③




「………わたくし、ヒューバート・ガルシアの……元……婚約者なのです……」


ソフィーと同時に息を飲んだ。

まさかの……!?

え!?

マーガレット嬢はスティーヴンと婚約してるわよね!?

ガルシア公爵とクラーク伯爵って、それほど親しい間柄なの!?


「………あ! け、決して邪魔しようとしているわけではないのです!」


途中で気付いたらしく、ガーネット嬢は慌てて手を振った。


「ですが、お話してみたいのです……ヒューバート・ガルシアは、わたくしと見合いすら、顔会わせてお話さえしてくださいませんでしたので……どのような方がヒューバート・ガルシアに見初められたのか、知りたいだけなのです……わたくし、それが分からなくて……」


………確かマーガレット嬢がそう言っていたと聞いたな……

………しかし、先程からヒューバートに敬称を付けていない。

まだヒューバートはガルシア公爵の家名を持っていて、彼女より位の高い者であるにも関わらず。

ヒューバートが家督を継げない(書類上はガルシアだけれども)、名目上勘当された騎士だから、だろうか。

………まぁ、問題にならないならいいけれど。


「その……わたくしの何処がいけなかったのか…ずっと考えてしまって……現在の婚約者と上手くいっていないのです……」


その言葉に納得した。

言ってはなんだけど、彼女はソフィーより可愛い。

清楚で、決して人の悪口など口にしないような……まさに深窓の令嬢、といった感じである。

………ヒューバート、罪な男め…

まぁ、彼女との婚約を解消してくれてたおかげで、ソフィーと婚約できたのだけれど。

彼女のことを思うと、少し複雑な気分だ。


「1つ、伺っても?」

「は、はい」


緊張した面持ちで返事をされる。


「ヒューバート・ガルシアとガーネット嬢、マーガレット嬢とスティーヴン殿、両家婚約はしきたりなのですか?」

「あ、いいえ」


慌てて首を横に振って否定するガーネット嬢。


「最初、ヒューバート・ガルシアとわたくしの婚約だけだったのです。ですがヒューバート・ガルシアが騎士になり、わたくしと婚約を解消した後、ガルシア公爵がマーガレット様との婚約者を探して、最終的にスティーヴンに決まっただけで」

「そうだったのですね」


特に関係はなかったのか。

………ま、彼女なら大丈夫だろう。

婚約者が他にいるということなら、ソフィーとヒューバートの仲を裂こうとはしないだろう。

………あくまで可能性、の話であって、完全に信用できることではないけれど。

私は彼女と今、初めて会ったのだから。

………しかし、マーガレット嬢とスティーヴンは幼馴染みではなかった?

それならヒューバートとガーネット嬢も会っていそうなものだけれど……

よほどヒューバートがヘタレだったのだろうか……


「ソフィー」

「………姫様…」


私はガーネット嬢を見ながら呼べば、後ろからソフィーの戸惑った声が聞こえる。

同じことを考えていたのかな?


「望まれているのですから、お話して来たら?」


1歩隣にズレれば、ソフィーの姿をガーネット嬢が捉える。

話の内容から察したのだろう。

ソフィーがヒューバートの婚約者なのだと。

私と瓜二つの顔を見て、ガーネット嬢が目を見開いた。

そしてすぐに悟りきったような顔で泣き笑いのような笑みを浮かべた。


「………ヒューバート・ガルシアは、ソフィア様のような聡明でお美しい方がお好みだったのですね……」


え゛……

私の何処が聡明で美しいと……?

ってか、仮にそうだったとしても、ソフィーと私が全く同じなわけではないのに。

世の中双子でも別人で、同じなわけではないじゃない。

暫く私とソフィーは固まったのだった。

複雑な気分になりながらも、否定できる場所でもなく、私は辛うじて微笑んだ。

その場にソフィーとガーネット嬢を残し、私は歩き出す。

少し私も甘味を口にさせてもらおう。

一角に足を向けると群がっている令嬢らが道を空ける。

………それは分かっているらしい。

私は並ぶことなく甘味を取り、庭園中央に並んでいる丸テーブルに向かう。

マーガレット嬢とエリザベス夫人がそこにいて、彼女たちの知り合いだろう夫人と令嬢がいて、マーガレット嬢が嬉しそうに招き入れてくれる。

その場所に混ざって、挨拶ではない話に加わった。


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