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第662話 王族主催茶会②




「マーガレット嬢、お久しぶりです」


微笑んでマーガレット嬢を見ると、ほんのり色ずく頬。

………可愛い…


「は、はい! 本当にお茶会に招待して頂けるなんて、夢のようです!」

「大袈裟ですわ。招待させて頂くとお伝えしていましたのに」

「で、ですが、社交辞令だとも思っておりました……」


シュン…とするマーガレット嬢は可愛かった。

羨ましい限りだ。


「まぁ……わたくしたち、お友達だと思っていましたが、違いましたか?」

「そ、そんなっ!? 違わなくないですわ!!」


ぉぉぅ…

力強く言われた。


「でしたら、お友達をご招待するのは当然ですわよね?」

「は、はい! ありがとうございます!!」


頬を染めて潤んだ瞳で見つめられる。

………なんだか、学園で見る姿と違って新鮮だな。


「マーガレット、そんなにはしゃいでは、はしたないですわよ」

「あ……すみません、お母様…」


マーガレット嬢が母と呼んだその人に視線を向ける。

目が合えば礼をする夫人。


「ガルシア公爵夫人ですね。はじめましてですわ。ソフィア・サンチェスです」

「エリザベス・ガルシアと申します。本日はわたくしと娘をご招待頂きましてありがとうございます」


綺麗な礼をする夫人は、とても所作が美しい。


「いいえ。ガルシア公爵には良くして頂いておりますから。公爵もご招待できたら良かったのですが……」

「勿体ないお言葉ありがとうございます」


微笑んだ夫人はとても綺麗だった。

つり目な夫人は気の強そうな感じに見えるけれど、貴婦人の貫禄、と言った方がしっくりくる。


「新事業を任せて頂きまして、夫は凄く張り切って管理しております。これからも何かあればわたくし達にお任せ下さいませ」

「頼りにさせて頂きますわ」


社交辞令に聞こえるけれど、不思議と夫人と目を合わせているとそんな考えは吹き飛ばされる。

………この人、凄く出来る人だ。

そしてそんな人に、私は認められているのだと、瞬時に分からせてくれる。

本当に心強い。


「お二人とも是非楽しんで下さい。甘味やお茶にご意見頂けたら嬉しいですわ」

「はい。ありがとうございます」


2人とも微笑んで次の挨拶待ちの令嬢や夫人に場所を譲る。

アシュトン公爵夫人やその他の人達と挨拶をし、顔見知りが増えていく。

やはりというか、中立派の貴族と、新国派の一部は、私の招待状の言葉を素直に受け入れてくれている。

そして旧国派と新国派の下級貴族は、裏の裏を読み過ぎて過剰なまでの煌びやかなドレス。

目が痛い。

さらにその豪華すぎるドレスで我先にと甘味に手を出すのだから始末が終えない。


私が過剰な贅沢を好まない。


それは一部の貴族には伝わっているはずなのに。

私より豪華なドレスを着て、恥ずかしくはないのだろうか?

主催、王族より贅沢な装いは失礼に当たるのにね。

そんなものを着てくる余裕があるなら、民に与えて欲しいという私の考えは、理解されないだろうな…


「ソフィア様」


会場を見渡していると声をかけられた。

視線を向けると、蜂蜜色の髪の美女がそこにいた。

初めて見る人だ。

誰だろう?


「スティーヴン・クラークの姉、ガーネットと申します」

「まぁ…! 良くおいで下さいました。初めまして。ソフィア・サンチェスです」

「弟からソフィア様のことは常々お聞き及んでおります。弟がご迷惑をおかけして申し訳ございません…」


………それは、精霊の件だろうか。

スティーヴンから伝わったのかしら?


「いつも弟は家でラファエル様が凄い、ソフィア様が凄い、と申しております。理由は言わないのですが、凄い、尊敬する、一生仕える、などと言っているので、学園でまとわりついているのではないかと…」


………そっちかぁ……


「大丈夫ですわよ。親しくして頂いておりますので、ラファエル様共々、楽しませて頂いております」


にっこり笑って言ったのだけれど、スティーヴンの姉は疑わしい視線を向けてくる。

………スティーヴン、家で一体何をしているんだ…


「それならよろしいのですが…」


これは何を言っても疑いを残すだろうな。

話題変えようか。


「………1つ、ソフィア様にお願いがございまして……」

「なんでしょう?」


好都合だ。

向こうから話題を変えてくれた。

でも、お願いって…


「………ヒューバート・ガルシアの婚約者様に会わせて頂きたいのです」


深く頭を下げた彼女に、私は思わず後ろに控えているソフィーを見る。

ソフィーにも聞こえていたのか視線が合う。

………一体何を考えているのだろう。


「………わたくし、ヒューバート・ガルシアの……元……婚約者なのです……」


ソフィーと同時に息を飲んだ。


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