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第657話 動き出します⑥




ラファエルがルイスの余計な一言――ごほんっ…忠告に従いお茶会不参加となった。

確かに夫人や令嬢の反感は買うだろうけれど、ラファエルがいるだけで心強かったんだけどな…

………って、私が甘えちゃダメなんだけどね。

私は現在ソフィーの部屋――侍女統括の部屋にいた。

ペラペラと書類を捲っていく。


「………」


唇に握った拳の人差し指部分を付けて考え込む。

………実に困った…


「………何とかならない?」

「なりませんね」

「そんな即答しなくても……」


はぁ……とため息をつく。

お茶会用のお茶の葉や甘味類の用意は完璧に出来る。

それは問題ない。

問題は……


「使える侍女が全く足りません」


………言い方…

ソフィーのキッパリはいいんだけどね……

含みあるネチネチが無いから。


「既存でいた侍女の教育がサンチェス国より遙かに劣っている状態から、姫様を邪険にしていた侍女と同等ぐらいには引き上げましたが、サンチェス国の王や王妃の侍女まで引き上げるのには、長期休暇中には絶対に無理です」


………あのさ…

色々突っ込みたいことがあるんだけど……


「………私の世話を放棄した侍女と同等って……仕事放棄してばっかりだったからあんまり仕事上手くなかったんだよね…」

「はい。仕事しないのですから上達するわけがないのです」


経験不足。

それがなによりの問題だ。

1日の仕事量は人数がいる場合、少なくなっていく。

それを更にサボるのだから経験など積めるはずもない。

………そんな侍女以下だったこの王宮の侍女らは、間違いなく元王と元王子のせいでもある。

本人達だけのせいではない。


「………ねぇ」

「はい」

「………使用人も使えない?」

「………姫様……?」


今まで王妃・王女主催の茶会には侍女が配膳などをしていた。

トラブル対応のために兵士や騎士が会場内を警戒するぐらいで、男性は参加しない。

使用人など配膳などで参加することもない。


「使用人も合わせれば、とにかく数は揃うでしょう?」

「………揃いますが、質の問題があります」


数は揃うも質が悪くて貴族夫人と令嬢の反感を買う。

私は侍女達の教育も、使用人を使ってさえも、ろくなサービスも出来ないと馬鹿にされるだろう。

………はぁ……いっそ侍女と使用人の顔を真似て配膳してくれるよう、精霊達が化けてくれたらいいのに…

そうしたら何もやらかさないだろうに…


「それでいきましょう」

「………は?」


私、何か言った……?

考え込んでいたら、ソフィーが「それでいきましょう」って言った?

私、口に何か出してた?


「精霊達に侍女と使用人の顔になって頂き、代わりを務めてもらいましょう」

「………え……?」

「顔を貸した侍女と使用人は1部屋に閉じ込めて出てこないようにして、一切見られないようにしましょう」

「………ちょっ……」


何やらソフィーがやる気になって、「準備がありますので!」と勢いよく出て行った。

………なんか、変なこと言っちゃった……みたい……

取りあえずやる気のソフィーを止めることなく、私はそっと立ち上がって部屋を出たのだった。


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