第656話 動き出します⑤ ―R side―
俺は現在ソフィアに膝枕されていた。
………何故だ。
と他の者が見たら思うだろう。
いや、嫌なわけではなく、むしろ幸せなひとときだ。
ずっとこうしていたいけれども。
ルイスに言われて、茶会に参加するのを諦め、その後は淡々と仕事に没頭した。
軽くルイスに肩を揺らされるまで時間を忘れて。
切り上げて早く部屋へ戻れと執務室を追い出された。
いつも通りにソフィアに「ただいま」と言い、ソフィアも笑って「おかえり」と迎え入れてくれた。
暫くいつも通りに会話しながら食事して、食後ののんびりした時間を過ごしていたときだった。
ふとソフィアが俺の顔をジッと見て口を噤んだのだ。
それに首を傾げる。
「どうしたの?」
「ん~……なんとなくなんだけど…」
「うん」
ソフィアも俺と同じ方向に首を傾げた。
「ラファエル、落ち込んでる?」
「………え?」
言われた言葉に目を見開く。
瞬き多くソフィアを見ていると、徐々にソフィアの目が据わっていく。
「なんかあったのね。私に何か出来ることある? 仕事でも、何か役に立つ案出せるかもだし」
「………俺のソフィアが可愛すぎる」
「………へ!?」
脈絡ない俺の言葉にソフィアが固まったと思えば、その頬を赤く染める。
ああ……可愛い…
思わずギュッと抱きしめてしまう。
俺の婚約者は可愛すぎだと思う。
やっぱり腹に何かを飼っている女達の巣窟に1人で送り出すのは…
実際には王宮に群がってくるのだけれど。
「うぅ……やっぱりソフィア1人茶会に行かせるのは嫌だな……」
「………1人?」
「………ぁ」
口を滑らせたことを知る。
「ラファエルも参加するって…」
ソフィアにジッと見つめられ、俺はルイスに言われたことを話した。
そしてソフィアに許可を貰ったけれど、やっぱり参加しない方がいい、と。
「………まぁ、私もそれに近いことを考えてはいたけれど…私自身すぐに貴族夫人や令嬢に受け入れられるとは思ってないから、そこまで深刻に考えなかったわ…」
「俺は全く考えてなかった。だから、ルイスの言うとおりにしようと思う…」
ソフィアの肩に額を置いて、ソフィアにすり寄った。
「………ラファエル、言動と行動が伴ってないよ」
苦笑しながら言われる。
理解はしたけど、感情が追いつかない…
う~…っと唸っていると、なんとソフィアが膝枕をしてくれたのだ!
俺を宥めるためだろうけど、真っ赤になって顔を反らしながら、っていうのがまた可愛いよね!
「ソフィア」
「な、なに……?」
「口づけも欲しいなぁ…?」
微笑んでそう言えば、一気に耳まで赤みを広げたソフィア。
可愛すぎるから!!
半分冗談だったんだけど、可愛いから是非実行してもらおう。
ジッと見つめてソフィアが答えを出すまで待つ。
最終的に決心しただろうソフィアの顔を見て、俺は笑みを深めた。
唇に柔らかいものが触れ、俺はソフィアに手を伸ばし、すぐに離れようとしたソフィアを引き留め、気の済むまでそのまま続けた。




