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第653話 動き出します②




回復してからの数日は、体力を戻すために朝昼晩と王宮の庭を歩いた。

それ以外はアマリリスとお茶会のお菓子の件を話し合ったり。

ソフィーに侍女と使用人の教育情報を聞いたり。

ラファエルといつがいいか話し合ったり。

………あれ?

私忙しくない?

と、少し嬉しくなりながらウキウキと準備をしていた。

茶会の日程はまだ先送りにされている。

教育が何処まで出来るのかもさることながら、1番の問題は私の体力次第なのだ。

ローズにも手伝ってもらって、普通に歩くだけではなく、王女らしい姿勢と雰囲気を保ったまま何時間保つか、というチェックをしてもらう。

何度も何度も叱られながら。

………心が折れそうだよ!!

準備で楽しかった心がローズの言葉を聞くたびに沈んでいく。

それを繰り返しながら日々を過ごしていた。


『この調子だったら、もう大丈夫だね』


そう言ってお兄様が帰ったのは昨日だ。

私の監視と称して温泉楽しんでたみたいだけどね。

お父様に叱られてしまえ、と思ったり思わなかったり。


「ソフィア、また背が少し曲がってる!」

「はぃぃい!!」


ローズの言葉が後ろから飛んできて、ビシッと背を伸ばす。

グギッと背が嫌な音をたてたのは気のせいだと思いたい。

汗をかいたのでパタパタと扇子で扇ぐ。

………扇風機欲しいかも…

涼しいはずのランドルフ国でびっしょりと汗を掻いているのは、何処を探しても私ぐらいしかいないだろう。

悲しいかな……

そろそろ走り込みを入れた方がいいかもしれない。


「ソフィア」

「ん?」

「お茶会はどちらでなさるの?」

「このお庭にしようと思うの。ソフィーが私のために作ってくれたし、私のお気に入りだから」

「そう」


ローズは頷いた後に、少し困ったような顔をした。

その様子を疑問に思う。


「どうしたの?」

「いえ…確かに綺麗なお庭ですけれど、心ない者が荒らさないかと思って…」


その言葉に苦笑する。

分かるけれども…


「そういう人はいるだろうけど…」


私は綺麗に咲いている花たちを見る。


「荒らされる可能性を懸念して、荒らされないような所を選んで、表面上の付き合いをする。それでいいとは思えないから」

「ソフィア…」


目を見開くローズに微笑む。


「悪意あって私のお気に入りの場所を汚すのなら、今後の付き合いをしなければいいことよ」


私は花の近くに座って、一輪の花に触れる。


「それに、それが必ず行われるとは決まってないでしょ? 今からあるかどうかも分からないことを考えて取り繕ってどうするの」

「………そうね」

「そうなったらそうなった後で考えるわ」


まさか王族である私に、人の目が沢山ある場所で嫌がらせをする人がいるとは思えないけれど。

それも王宮で。


「もしそんなことが起これば、この花たちに申し訳なく思うけれど…」


そんなことをする貴族がいると、思いたくもない。

影の嫌がらせなら分かるけれども。

………それも許されることではないけどね。

そういう人もいると、否定できないのも辛い。


「せっかく綺麗に咲いているんだもの。私達だけじゃなく、もっと大勢の人に愛でられる方がずっといいと思わない?」


微笑んでローズを見ると、ローズも微笑んでくれる。


「そうね。綺麗だものね」


同意してくれるローズに頷き、立ち上がった。


「さぁ、続けましょ!」


私はローズを促し、また訓練に戻った。


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