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第652話 動き出します




『よろしいでしょう』


そう医者から太鼓判を押されたのは2日経ったときだった。

そっとベッドから出るときはフィーアとアマリリスが両脇に控えていた。

しっかりと足を床に付け、ゆっくりと立ち上がる。

フラつかないし、歩くのも問題なさそうだった。

自分の足で部屋に向かう。

短距離だったけれど疲れもせずにソファーへと行き、座れた。

ホッと息を吐く。


「これなら大分早く復帰できそう」

「よかったです」


アマリリスがお茶を用意し、フィーアは私の傍で微笑む。


「早く体力を回復させないとね」

「あまりお急ぎになさらない方がよろしいかと…病み上がりなんですから」

「そうなんだけど、ちょっとでも私の義務を果たさなきゃ」

「義務、ですか……」


フィーアが訝しげに見る。

数日前にソフィーが言ってたと思うんだけどな。


「この国の貴族夫人や令嬢を招いてお茶会」

「………ぁ……」

「お披露目はまだ先だけど、私はこの国に嫁ぐのだから、その前に地盤を固めなければね」


ラファエルだけに、ルイスだけに、認められてるだけじゃダメ。

この国のことだけではないけれど、民がいてこその王族なのだから。

民に認められて初めて、私はこの国にいられる。


「フィーアもアマリリスも顔を出せないけれど、裏方で協力をしてくれたら嬉しい」


フィーアはこの国の元貴族。

しかも罪人の娘として周知の事実だ。

まだ貴族夫人の前に出すことは出来ないだろう。

………ひょっとしたら、一生…

アマリリスはまだ私の正式な侍女ではない。

制服さえ変更すれば、と思われるかもしれないけれど、見せかけで騙すようなことはしたくない。

しかも城下の酒場でラファエルに絡んだ件はどこからか広まっているかもしれない。

アマリリスの顔は誰が見ているか分からない。

こちらもまだ早いと判断する。

数年経っているならまだしも、今はまだ。


「はい!」

「任せて下さい姫様! 沢山食べたことのないものをお出しします!」


2人は悲観することもなく、むしろ張り切っている。


「アマリリス、お茶会なのだから、食事は出すとしても軽めでね?」


苦笑するとアマリリスがハッとする。


「私は甘味の方がいいと思うけれど」

「そ、そうですよねっ! 失礼しました!!」


アマリリスが顔を染めて恥ずかしがる。

………可愛いな、おい…!!

さすが「恋奪1」のヒロインっ!!

羨ましい限りですよっ!!


「1口サイズの……ラファエルの作ってくれたシュークリームとか…」

「マカロンとか、パンケーキの1口サイズとか如何ですか?」

「いいわね」


アマリリスと甘味のアイデアを話し合いしていると、部屋の扉が開いた。


「ソフィア」

「あ、ラファエル。お帰りなさい」

「ただいま。動いて平気?」


心配そうに近づいてくるラファエルに、こくんと笑顔で返す。


「心配かけてごめんね…」

「謝らないで。心配ぐらいさせてよ」


頭部にキスをされ、私の肩を抱きながらラファエルが隣に座る。

アマリリスはラファエルが入室したときに、既に壁際へと移動していた。


「ソフィアが回復してよかった」

「長い間、ついててくれてありがとう」


ランドルフ国ではあれだけれど、サンチェス国では随分長い間ラファエルを拘束してしまった。


「俺もソフィアの傍に長い間いられたからね。逆にお礼を言わないと」


ラファエルに茶化され、2人してくすくす笑い、私はそっとラファエルに寄りかかった。


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