表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
647/740

第647話 何度も言われてる




う~んと私は唸っていた。

ベッドに寝たまま。

まだ体力が回復していないというのに、路面電車、線路の出来見たさにラファエルと医者に無理を言い、ついて行ったのがいけなかったのだろう。

少し熱が出てしまっていた。

………私はこんなに病弱のはずでは…

精霊の力というのは、それ程大きなものだということを改めて知る。


「ソフィア、大丈夫?」


こくんと頷く。

ラファエルがベッド脇に座って覗き込んでくる。


「………そういえば、お兄様は…」

「ぁぁ、ランドルフ国を少し回ってきていいかって出かけたよ」

「………ランドルフ国を…?」


首を傾げてしまう。

祭りの様子を見たかったのは分かるけど、なんでランドルフ国を回るのだろう…?

お父様に何か言われてるのかな…?


「レオポルド殿のことはいいから。ソフィアの回復が先だよ」


心配そうに見てくるラファエルに申し訳ないと思う。

私が我が儘を言ったせいだ。


「………ごめんなさい……」

「ん?」

「………無理言って連れて行ってもらったのに……倒れちゃって……」


私が倒れたのは帰りに乗った路面電車の中。

私の体調を民には知られないよう、見えなくなるまで我慢した結果、ラファエルに倒れ込むように意識を手放したらしい。

ハッと目を開くともう寝室に横たわっていた。

しょんぼりする私の頭をラファエルが優しく撫でてくれる。


「気にすることないよ。俺の案の出来具合をソフィアに見てもらえて嬉しいよ」

「………」


怒ることなく言ってくれるラファエルに、罪悪感が抑えきれない。

もう我が儘は言わないようにしよう…

元気になったらラファエルはきっと、強請らなくても連れて行ってくれるから…


「ソフィア」

「………ぇ……ぁ、何?」


ハッとしてラファエルを改めてみると、何故か眉間にシワが寄っていた。


「………ど、したの……?」


目を見開いてラファエルを見る。

今の間に何があったのだろうか…


「………いや…気のせいかな?」

「何が?」

「ソフィアがなんか我慢する決意をした気がする」


だからエスパーか!

ビクッとしてしまったじゃないか!!

それを見たラファエルがにっこりと微笑んだ。

怖いわよ!!


「俺はソフィアの我が儘、聞けないことならキッパリと断るでしょ」

「………ぇ……ぅん…」


言われた意味が分からなくて曖昧に頷く。

あ、いや、言葉は分かるよ?

でも、ラファエルの言いたいことが分からない。


「だから今回の件は、ソフィアのせいじゃないってこと。連れ出した俺にも非がある」

「え!? ラファエルは反対してたでしょ!?」

「1度はね。でも結局医師を説得して一緒に出かけると決めたのは俺だよ」

「でも……」


私の唇をラファエルが人差し指で押さえた。

パチパチと瞬きを何度もしてしまう。


「これからもやりたいことを言っていい。ダメだと思ったら言う。俺はソフィアのやりたいことを制限はするかもだけど、禁止にすることはないよ」


そっとラファエルの指が離れて行く。


「だから、我慢しないで。ちゃんと口に出して。分かった?」

「で――」

「でも、は禁止」

「ラファエル…」

「ねぇソフィア。俺とソフィアは婚約者でしょ。未来の夫婦」


それは間違いない。

こくんと頷く。


「ソフィアの考える婚約者こいびととか夫婦って、一方が我慢するものなの?」


ラファエルの言わんとしていることが分かり、ハッとする。


「俺はいっぱいソフィアに我が儘言ってる。だからソフィアも俺にいっぱい我が儘言うこと。これ、前にも言ったよ」


少し寂しそうな顔をするラファエルに慌てる。

ラファエルにそんな顔をして欲しいわけじゃない。


「分かったから! ラファエル…そんな顔しないで…」


そっとラファエルの頬に手を添えると、その手にラファエルがすり寄ってくる。

そのままラファエルが身を倒してくるので、私は抵抗なく受け入れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ