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第644話 近づけるわけにはいかない ―R side―




今日の業務終了。

そう言ってルイスを叩き出した。

そして俺は執務室から出る前にやっておかなければいけないことがある。


「今日の当番以外は戻っていい」


そう言うと俺の護衛騎士達は出て行く。

今日の当番はなにせ……


「久しぶりだなナルサス」

「はっ!!」


声をかけるのは今日初めて。

あのガイアス殿とリーリエ王女が来ていたときも話さなかったしね。


「どう? 訓練で揉まれてきた気分は」


今の今まで騎士訓練の中に叩き出しておいた。

なにせソフィアの侍女にちょっかいかけてたしねぇ。

アマリリスはもうジェラルドのモノだ。

ずっとアマリリスを女除けにしていたナルサスには仕置きが必要だった。

アマリリスは王宮侍女ではない。

ソフィアの侍女なのだ。

そんな立場の者に、ソフィアの侍女を好き勝手に使った罪は重い。

厳重に叩きのめしてくれと頼んでいた。

それを今回終了させて呼び戻した。

正式にジェラルドと婚約したしね。


「………申し訳ございませんでした」


直角に頭を下げるナルサスを、俺は机に寄りかかって腕を組んだ状態で、冷ややかに見つめる。


「さっき、リーリエ王女を見ていたね」


ビクッとナルサスの肩が跳ねた。

次のターゲットをリーリエ王女にするわけにはいかない。


「ソフィアに似ているし、アマリリスにも似ているね。言動や行動が」


震えるナルサスに目を細める。


「ナルサスの趣味にとやかくは言わないけど、自分の立場、わきまえろよ」

「………申し訳ございません」

「謝ればいいってものじゃないだろう。彼女は王女だ。平民のお前が近づける立場だと思うな」

「っ……」


ソフィアを馬鹿にして、アマリリスを好き勝手使っていた。

内心では、好みの部類なのだろう。

ソフィアは可愛いけど、ナルサスに言わせれば普通の女、それより下。

けれどキッパリした、自分の信念を持っている女は好ましいのだろうね。


「王族は王族としか交際すら出来ないぞ」

「承知しておりますっ!」


条件反射で叫んだのだろう。

けれど、言動と表情が合っていない。


「………本当かな?」

「み、見てただけで……」

「お前は信用できないからな。――さっきから首が痛むのだろう」


ツッと頬を流れ落ちる汗を見逃さない。


「偽りを述べると、命を落とすぞ」

「っ!!」


ハッと俺を見上げ、その瞳に怯えが見える。

死にたくはないのだろう?


「自分の立場をもう1度思い出せ。お前は俺の監視下にいる罪人、だとね」


ナルサスは俯き、唇を噛んだ。


「ソフィアを殺しかけた罪人。そしてソフィアの侍女を自分の為に使っていた。ソフィアはもちろん、俺に許されると思うなよ」


コツ、コツ、とゆっくりナルサスに近づき、耳に唇を寄せる。


「お前は、現在自分の欲のために生きてるんじゃない。罪を償うためにいるのだろうが。よそ見などするな。お前は俺とソフィアの為だけに今ここにいるんだ。これ以上余計な欲に走れば、即その首を胴から離すぞ」


ストンとナルサスが床に崩れ落ちた。

俺はそれを見下ろす。


「ソフィアが許しても俺は許さないけど。お前が望んだんだろう? 俺の傍に、と」


本当は俺の願いも入っていたし、ソフィアの希望も入っている。

けれど、それはナルサスが許されたからじゃない。

俺のためにナルサスを生かせとソフィアに願われたから。

俺が数少ない友人を失いたくないと思ったから。

生きることが罰になるようにしたから。

そのナルサスが、勝手な行いをすることを許してはいない。


「よく刻み込んでおくことだな」


俺はナルサスを置いて執務室を出た。

これで牽制になればいいけど…

俺は真っ直ぐにソフィアの元へ向かった。


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