第636話 不意打ち困ります
「………よし!」
侍女の手を借りずに綺麗に着付けが出来た。
「ソフィア~」
うんうん、と自己満足で頷いていると、寝室にラファエルが入ってきた。
だからノック!!
むぅっと頬を膨らませながら扉の方を見た。
………ぐはっ……!!
すぐさま私は顔を反らした。
は、鼻血でそうっ!!
バッと鼻から口までを手で覆う。
マズいよソフィア!!
さすがに仮にも王女がそれやっちゃったらダメでしょ!
入ってきたラファエルは、浴衣を羽織っただけ。
ソフィー達から聞いてたのか、素肌に羽織った状態で。
し、下には視線を向けてないからどうなってるのか分からないけどっ!!
モロ見ちゃったよ!!
ラファエルの上半身、素肌を!!
自分が着痩せするタイプって知っておいてよね!?
バッチリ好みの筋肉質な肌を見ちゃったよ!!
ふ、腹筋が割れ……!!
いやいや私落ち着け!!
毎日あの身体に抱きしめられていることなんて考えるな!!
全身が茹だっている気がする!!
早くなるな心臓!!
こんな過激なラッキーなんちゃらいりませんよ!!
「………何してるの?」
「………お気になさらず…」
貴方のせいですっ!!
とは言えなかった。
どうしよう…
腰が抜けた…
「大丈夫?」
へたりこんでしまう私の前に回り込んでくるな!!
視界に入っちゃうからぁ!!
「だ、大丈夫っ」
ギュッと目を瞑る私を、多分ラファエルは不思議そうに見ているだろう。
「そう?」
「うん、気にしないでっ!!」
「………ソフィアがそれでいいならいいんだけどね? 俺の侍女に着せてもらおうと思ったんだけど、出来なかったんだよね。で、ソフィー達を送り出したんだったら、これ着せられるのソフィアだけでしょ」
ラファエルの言葉にハッとする。
「俺を見られないなら、ソフィアも無理?」
「ぅぅぅっ」
しっかり見られないことバレてます。
そりゃそうですよねー!!
「ソフィア顔真っ赤」
くすくす笑うなー!!
ラファエルのせいでしょうがっ!!
分かっててやってるな!?
「や、やれるから!! 前だけ閉めて!! 左が上になるように!!」
「は~い」
笑いながら言うのやめてよぉ!!
「閉じたよ」
ラファエルの言葉に、そろっと目を開けていくと、ちゃんと前を閉めたラファエルが目の前にいた。
「………はぁっ…」
ホッとして脱力する。
素肌が見えなくなったことで、抜けた腰も動けるようになっていた。
「ごめんね」
「私で遊ばないでよぉ…」
「ソフィア最近照れてくれるようになったから嬉しくて」
どういう理屈よ!!
私はラファエルを立たせて、自分も立ち上がった。
シワになっていたところをきっちり伸ばして着付けをしていく。
「………えっと……」
自分とは逆になるから…
ああして、こうして、と考えながらやっていると、突然頭にちゅっと……
………ん!?
バッと顔を上げると、満面の笑みのラファエルがいた。
「な……え……!?」
「ごめん。ソフィアが真剣なのが可愛くて」
「邪魔しないでくれる!?」
「だからごめんって」
こっちは真剣なのにっ!!
むぅっと頬をまた膨らませると、頬に唇が落ちてくる。
ちょっとぉ!?
その後もラファエルにちょっかいかけられながら、私はラファエルの着付けを終えたのだった。




