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第635話 無意識で地雷




「ただいまソフィア」


オーフェスと2人きりで喋っていた。

私が主に喋っていただけなんだけどね。

フィーアとアマリリスもお祭りに行ったし、暇だったんだよね。


「おかえりラファエル」


だから、ラファエルの考えそうなことに気付かなくて…

入って来た瞬間、ムッとしたラファエルに戸惑う。


「ど、どうしたの…?」

「………寝室に男と2人きり」

「………はっ!!」


言われてみれば、寝室でオーフェスと2人きりはマズいだろう。

ただでさえラファエルはよく思わないのに!

焦る私とは裏腹に、オーフェスは壁際に置物の如く気配を消して立つ。

………助けなさいよ!?


「ちょっ…! ラファエルが思うようなことは絶対ないよ!?」

「俺が思うようなことって?」


言葉を間違ったようだ。

ラファエルの目が据わっていく。

私のバカ!


「私がオーフェスとどうこうなるわけないでしょ!? 騎士達はお祭りデートに送り出して、フィーアとアマリリスは一緒にお祭りに行かせただけだよ!? パートナーがいないオーフェスが残るのは必然で!」

「………で?」

「ひ、暇だったから話し相手にしてただけで、やましいこと1つもないよ!?」

「………ふぅん?」


………何故更に怒るのラファエル!?


「ソフィアは分かってないようだね?」


にっこり笑わないで!?

怖いから!!

私が何を分かってないの!?


「俺はソフィアと同じ空間に、男と2人きりでいることが気に入らないんだよ」

「騎士の存在意義を消さないで!?」

「冗談だよ」


そんな怒った瞳のまま言われても、冗談じゃないのは分かるから!!


「………せめてリーリエ王女を同じ空間に置いておきなよ」

「………ローズの選択がないのは何故…」

「え? ソフィアのことだからローズ嬢もルイスと祭り行けって言うでしょ」


………確かに…

ラファエルがベッドに腰掛ける。

そして私を引き寄せた。


「そう言うと思ってルイスとローズ嬢を送り出しておいたよ」

「ありがとうラファエル」


やっぱりラファエルは気が利くね!

ヒューバートもそうなれればいいのに…

あれではソフィーが可哀想だ。


「リーリエ王女も花火ぐらい見せてあげたいんだけど」


ラファエルを見上げると、微笑まれる。

今度のは裏表ないやつだ。


「ガイアス殿と見られるように手配はしてるよ」

「え……? ガイアス王太子も…?」


一応罪人として連れてきたガイアス・マジュも娯楽であるイベントに参加させていいのだろうか。

参加、といっても多分花火を見るぐらいだろうけれど。


「宣伝も兼ねてね。毎年する予定だから、マジュ国からの観光客も来るように」

「問題が起きなきゃいいけど……」

「その時は出入り禁止にするから」


ラファエルにとってはランドルフ国の改国の方が重要なんだな。

そうだよね。

経済潤わないと、国を豊かに出来ないしね。


「………まぁ、今回の件でガイアス殿が、王太子のままいられるとは限らないけどね」

「………今サラッと言ったね…」

「サンチェス国で言ってたでしょ。他の王族を他国に放ったって。その対応が1番良かった王族が、ガイアス殿に代わって王太子になる可能性がある。リーリエ王女が何でもない顔をしていたから、問題を起こさないまともな者なのだろう」


ラファエルがなんとなしに言っていることから、リーリエ王女はラファエルの王族基準には達しているのだろう。


「そっか。期待できると良いね」

「うん。それじゃあ、着替えようか」


ラファエルがオーフェスに手で出るように示しながら言い、出て行ったのを確認してから私は枕元に置かれていた浴衣を手に取った。


「………ラファエル」

「ん?」

「いや……出てって欲しいんだけど…」

「チッ」


………もうラファエルの本気の舌打ちに慣れちゃったなぁ…

苦笑しながらラファエルも出ていったのを確認して、私は着替えたのだった。


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