第623話 もう少し
アレから5日。
ようやく部屋の中なら自由に歩き回っていいと許可が出た。
ベッドに寝すぎで、相当四肢の動きが鈍くなっている。
リーリエ王女とお茶したときより衰えている。
これはスケジュール詰めて無理しないと、ラファエルとお祭りデートは出来ないな。
かといって、ラファエルにバレたら怒られるだろう。
………う~ん…
マイペースにいこう。
ラファエルとはこれからもずっと一緒。
今回が最初で最後ではないのだから。
むんっと拳を握った。
間に合わなかったら諦める。
間に合ったらラファエルとデート。
どちらにしてもラファエルは私と過ごしてくれると言ったのだから、王宮で過ごすかお祭りデートかのどちらかだ。
一緒にいられることは確実なのだから、ラファエルに怒られること前提でリハビリする必要はない。
凄くデートはしたいけど。
ゆっくりと歩行練習していると、気配が1つ増えていることに気付く。
「………なんでいるの?」
「ソフィアの見張りだけど?」
優雅にお茶を飲んでいるラファエルがいました。
思わず固まってしまった。
だって、今朝はお父様とお兄様と打ち合わせって言って出て行ったのだ。
ほんの小一時間程前のことで、そんなにすぐに帰ってくるとは思っていなかった。
「見張りって…」
「だってソフィアの事だから、動く許可が出て俺と祭りデートするために無茶するんじゃないかなぁって」
………エスパーか。
「その気持ちは嬉しいけどね。無理してまた寝込んだら意味がないじゃない?」
「………無理する事なんて考えてないよ。まずは普通に歩けるようにならなきゃだし…」
「うん。ソフィアを過小評価してた。ごめんね」
可愛く首を傾げて詫びるラファエルに、良心が痛む。
実は葛藤してました、とは言えない…
「でもちょっと寂しい…」
………いつものラファエルでなによりです。
「ラファエルとデートはしたいけど、私が無理する前提なら、ラファエル喜ばないだろうなって」
「うん。勿論」
「だからラファエルが気兼ねなく一緒にいられる方がいいもん」
私もラファエルの立場だったら絶対に止めるし。
「ありがと」
「お礼を言うのは私でしょ? いっぱい迷惑かけているのに付き合ってくれてる」
「迷惑は全然かけられてないから」
そうは言っても、ラファエルのランドルフ国での仕事の時間を奪っている。
楽しみにしていたお祭りデートも私の状態次第。
つくづく私はラファエルの邪魔している気以外しない。
「明日、魔導士達の罰である地域に罪人輸送するんだって。2・3日はレオポルド殿と直属兵士も同行して、働きを監視するんだって」
「そうなのね」
なら数日はお兄様の襲来にゲッソリすることはないだろう。
「多分その間は俺もゆっくりできるから、ソフィアの練習に付き合うよ」
「嬉しい。よろしく」
どんな理由でもラファエルと過ごせる時間が好きだ。
少し大胆になってもいいかな…?
内心ドキドキしながらラファエルの背後に回り、ソファーに座っているラファエルの首筋に腕を回した。
「ん? どうしたの?」
嬉しそうに振り返って見上げてくるラファエルに、キュンとしてしまった…!!
絶対顔が赤い!!
「………ちょっと甘えたいなぁって…」
「大歓迎だよ」
ラファエルが不意に私の後頭部に手を当てたと思えば、引き寄せられた。
そのままの状態で口づけされる。
驚いてパッと腕を放そうとすれば、ラファエルに腕を固定される。
「もうちょっとこのまま。ソフィアから抱きついてくれるの珍しいし、この体勢、初めてでしょ」
「そ、そうです、ね…」
「ソフィア顔真っ赤」
「い、言わなくていいからっ!!」
結局自分でしたことだけれども、ラファエルの気が済むまま、その状態で過ごしたのだった。




