第621話 処罰の行方
マジュ国王の返事が来た。
そう伝言を受けて、私はラファエルと共に応接室へと向かう。
到着すればガイアス・マジュもリーリエ王女が既に到着していた。
お父様を前にして萎縮しているようだった。
お父様の両隣にはお兄様とお母様もいた。
………って、お母様!?
なんで!?
「遅くなって申し訳ございませんわ」
「構わん」
取りあえず謝罪すると、お父様は首を横に振ってソファーを指した。
私とラファエルも着席する。
「マジュ国王からの返事だが」
前置きなしにお父様は切り出し、2人が息を飲む。
「魔導士の処分はこちらで一任することを了承した」
「はい」
「当然ですね」
全員が頷いた。
「ガイアス王子には、こちらよりもランドルフ国への被害の度合いが大きいため、2月無賃でランドルフ国の手伝いをするようにと書いている」
「え!?」
思わず腰を浮かせるガイアス・マジュを気にも止めずにお父様は続ける。
………というか「王太子」ではなく、「王子」と称するのは、お父様の嫌みだろうか?
「リーリエ王女は特に咎めはないため、何処へ支援に行こうがいい、とのことだ」
「でしたらわたくしは、ガイアス王子の目付役として、ランドルフ国へ行かせて頂いてもよろしいでしょうか? 他の国には別の王族がそれぞれ派遣されておりますので」
王女の言葉に全員の視線が向く。
………というか貴女まで「王子」と呼ぶんだ…?
「………それよりこちらの魔導士が力を使って逃げ出さぬように、監視を願いたいが?」
「こちらの魔導士には魔力封じの魔法で枷を付けます。魔法は一切使えない上に、付けた本人しか外すことが出来ません。わたくしが責任を持ってかけさせて頂きます」
真っ直ぐお父様を見つめるリーリエ王女。
その瞳は力強く、偽りを言っているとは思えない。
「ガイアス王子はわたくしより魔力が強いので、わたくしの魔力封じは効きにくく、外されては逃亡の恐れがありますので、ガイアス王子に付きたいと思います」
「逃げないよ!?」
「信用なりませんわ!!」
………うわぁ…
キッパリと言われてズン…とガイアス・マジュが落ち込んだ。
「これ以上、マジュ国王族の評価を下げるわけにはまいりませんから」
「………いいだろう」
お父様がマジュ国王の手紙を机に置いた。
「処罰について事前に話し合った結果、捉えた魔導士達は半年間の労働を課す」
「労働ですか」
「サンチェス国の特産である食物を魔物に食い荒らされたのだ。元に戻ったとはいえ、放置した罪は無くならん。あの地の次の収穫が半年後予定だ。それまで働いてもらう」
「納得致しました。ではこの話し合いが終わった後に、牢へ行かせて頂いてもよろしいでしょうか? もちろん、監視を付けて頂いて構いません」
………どうでもいいんだけどさ……
なんでリーリエ王女がお父様と話してるの?
普通ガイアス・マジュなんじゃない?
王太子なんだし…
誰も疑問に思わないのだろうか…?
「数名の兵士を付けさせてもらう」
「はい」
リーリエ王女が頷いたところで話が纏まる。
「じゃあガイアス王子とリーリエ王女の監視は主にランドルフ国の騎士と――ソフィアにやってもらおうか」
「………お兄様、何故わたくしなのです」
「え? 万が一2人がマホウを使って逃げようとしたら、捕まえられるのはソフィア(の精霊)だけだから?」
「………」
この場合、納得してもいいのだろうか?
「ラファエル様と宰相でも大丈夫だと思いますが」
「でもソフィアの方が強いでしょ」
「レオポルド殿、ソフィア王女はまだ本調子じゃない。私が引き受けるよ」
ラファエルが待ったをかけ、庇ってくれる。
「そう? じゃあ頼んだよ」
にっこり笑うお兄様。
………なんかハメられてない?
ラファエルは苦笑してるし…
そのまま話し合いは終了した。
………結局お母様がいた意味は…?
分からぬまま、その場は解散となったのだった。




