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第617話 想像が正解




気を取り直してリーリエ王女と話すことになった。

復活したガイアス・マジュは肩身が狭いようでソファーの隅にちょこんと座って縮こまっている。

………小動物みたい…


「では改めて聞くけど、そのマジュ国の結界っていうのは何?」

「国境の壁伝いに一定の距離ずつ魔導士が配置され、魔物を外に出さないようにずっと結界を張っているんです」

「………ずっと1人で?」

「さすがに無理ですよ。1時間交代で王宮勤めの魔導士が務めています」


ラファエルとお兄様がリーリエ王女と話しているのを、大人しく聞く。

1時間交代なら魔導士にそれ程負担はないのだろう。

でも今回結界が破られたということは……魔導士に手を出した人物がいる…?


「調べた結果、魔導士5名、何者かによって担当場所放棄させられていました」

「「!!」」


リーリエ王女の言葉にラファエルとお兄様が目を見開き、私は逆に目を細めた。


「………それは、どのような?」


つい口に出してリーリエ王女に問いかけた。

彼女はゆっくり私を見る。


「命を奪われておりましたか? ………それとも――色仕掛けで?」

「ソフィア?」


ラファエルに呼ばれるけれど、私はリーリエ王女から目を反らさなかった。

彼女の方も目を細めた。


「………言えませんか?」

「いいえ。さすがソフィア王女ですわね。答えは――後者です」


リーリエ王女の言葉に、ラファエルとお兄様は顔を見合わせた。

今まで見た魔導士はリーリエ王女を除けば全て男性。

結界を作り出していた魔道士達も男性達の可能性が高かった。

それで聞いた。

色仕掛けで落ちたのなら、女に免疫がないか女との経験が少ない男性の方の可能性が高いし。


「もう1つお伺いします。聖女召喚は――魔物を逃がさぬ結界が消える前ですか、後ですか」


結界が消えたから聖女を召喚した。

聖女を召喚してから結界が消えた。

どちらが先かで原因となった人物がハッキリする。

ガイアス・マジュは結界が消えたから聖女召喚をした、と公言した。

――本当に?

もし違った場合は…


「………ソフィア王女は、千里眼でもお持ちなのですか?」

「まさか。そんなもの持ち合わせておりませんよ。ただ、いきなり結界消失するわけがない。原因はある。そして原因は魔導士が色仕掛けで落ちたから。ではその相手は?」

「………」

「もし、聖女召喚が結界消失より前なのでしたら、聖女が結界消失させるために魔導士を言葉巧みに操った、という仮説が成り立つんですよ」


ビクッとガイアス・マジュが反応した。

それを見逃すほど、今の私は鈍くない。


「………その理由をお聞かせ願いますか?」


ボコッとガイアス・マジュを殴りながら聞かないで欲しい。

さすがに可哀想だよ。

そしてその受け答えはNG。

正解だと言ってしまったようなものだ。

ラファエルとお兄様も気付いたようで、ラファエルはゲッと顔を歪めていた。


「聖女はラファエル様目当てでしたから。そして自分が魔物を消滅させられる聖女だと理解しておりました。でも呼び出されたのは結界が壊れていない状態。マジュ国から離れられないと知った彼女のとった行動は魔導士達の籠絡。言葉巧みに誘い出し、任務放棄させ結界を消滅させた。これでランドルフ国へ行く準備が整った事に喜び、後のことは知らん顔で一直線に突き進むのみ。これでランドルフ国へ行ける。逃げ出した魔物は各地に散り、願ったとおりにランドルフ国へ来られた。そして実物のラファエル様に会って恋い焦がれ、これで魔物が襲ってくれば準備完了。ラファエル様がお困りの所を華麗に助け、愛をはぐく――」

「――ソフィア、黙ろうか」

「すいませんでした」


つい熱演してしまい、左手を胸に、右手を伸ばして言っている途中で、怖いラファエル様の声で身体が固まりました。

スンッとした顔で通常王女モードに戻ります。

興奮して私は何を言っているんだ。

ラファエルに恋するのは勝手だけれど、実際に奪う気ならば話は別。

誰が渡すか。

ラファエルは私のモノ――こほんっ。


「………さすがソフィア王女ですわね。お父様とお兄様が見抜けなかった事を憶測でそこまで。素晴らしいです! 無能とは違いますわね!」


………うん。

グサッとガイアス・マジュの心臓に言葉の刃突き刺さっているから。

それにこれは、ダメダメヒロインの典型的な考え方だと思うんだよね。

ゲーム通りになっていないなら、ゲーム通りに進むように正してやろう。

そして意中の相手と結ばれればいい。

………その考えってどうなんっすかね。

後のこと考えてるんですかね。

運良く結婚できたとして、その後どうすんの。

エンドロール流れるとでも思っているのだろうか?

その後の生活で、優雅に過ごせるとでも?

――王太子妃を、王妃をナメ過ぎじゃないですかね。

自分のことしか考えられないなら、上に立つな。

悪になって断罪されたいならどうぞ、って言うけれど。

民を幸せに出来ないなら、反乱が起きても文句は言えない。


「………ラファエル様、お兄様、お願いがあるのですが」


にっこり笑って2人を見ると、嫌そうな顔をされた。


「………想像つくけど、何かな?」

「聖女、処理するか、処理させにいかせて下さいませ」


両手を合わせて可愛く見えるように首を傾げた。

これ、いつ以来だろう。

けれども民に被害を出すところだったあの被害を、自分だけの我儘で行った聖女ヒロインは許せない。

民を蔑ろにして、何がヒロインだ。

何が聖女だ。

絶対に許さない。

サンチェス国の王女として、ラファエルの婚約者として、――人として、許せない。


「「却下!」」


………ですよねー


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