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第603話 お転婆王女再び②




ラファエルの、ついでにお兄様の説教覚悟で王宮を抜け出した。

火精霊ホムラに飛び乗り、上空を飛んでもらっているとき、部屋着用のドレスだったことに気付いたけれど後の祭りだ。

これも怒られる覚悟でいよう。

元はといえば、ラファエルが自分の精霊を回収しなかったのが悪い!

責任転嫁しながら私は地上を火精霊ホムラの上から見ていた。

………ラファエル……どこ……

魔物の気配は精霊でさえ掴みにくいから目で探すほかない。


『落ち着け主』


火精霊ホムラの声が聞こえてハッとする。

ラファエルを探す事で頭がいっぱいだった。

周りが見えていないことに気付く。


『王太子は精霊を連れている』

「………ぇ……」

『水の精霊を』


火精霊ホムラの言葉に私は改めて自分の中を探る。

1、2、3……ぁ……


「ユーグがいない!」

『あの者の気配なら分かる。だから落ち着け』


確かに私は魔物の近くにラファエルがいると思って、魔物の気配と目でラファエルの姿を探していた。

火精霊ホムラがユーグの気配を感じられるなら、その方向へ向かってもらえばいいだけ。


「そ、そっか……ありがとう」


幾分か気持ちが落ち着き、私は深呼吸する。


「………ぁ、せ、戦闘の気配とか分かったりする!? 今戦っているのかどうかとかも!」


今どうなっているのか知りたい!

ラファエルが――ユーグが戦っているのなら、早くしないとラファエルが傷ついてしまう!

脳裏にあの時のラファエルの姿が思い出される。

火山の森で、木の下敷きになって、身動き1つしなかったラファエルの姿が…

ブルブルと頭を振って、その姿を振り払う。

縁起でもない!

お願い火精霊ホムラ

まだ戦ってないと言ってっ!


『ああ。まだ戦闘にはなっていない』


その一言に胸をなで下ろす。

まだラファエルは傷1つ負ってない…

よかった……


『あの者の気配が大きくなってないからな』

「………大きく?」


火精霊ホムラの言葉に私は首を傾げる。

気配が大きく、とはどういう意味だろうか…


『戦闘になれば、大なり小なり気配が膨れ上がる。戦闘態勢になるからな』


気配が膨れ上がる…?

どういう意味だろうか?

うんうん唸って考え、閃いた。


「戦闘態勢……騎士とか兵士みたいに殺気が出る、みたいな感じ?」

『そう思ってもらっても間違ってはいないだろう』


成る程……

魔法で言ったら外に力を具現化することで、気配が大きくなるって事かな?


『む……』

火精霊ホムラ?」

『マズいな。飛ばすぞ主』

「え……」


返事をする前に火精霊ホムラのスピードが上がった。

慌てて私は火精霊ホムラに捕まる力を強くした。

風精霊フウが固定してくれているけれども、それでも不安だった。

景色が流れていき、パッと前が明るくなった。

火精霊ホムラが雲の下に移動していた。

改めて下を見ると、人と魔物が戦っているのが見えた。


「え!?」


火精霊ホムラの「マズい」という言葉の意味がすぐに分かった。

一足遅く、戦闘になってしまっていたようだ。


「ら、ラファエルはどこ!?」

『中心にいる! 今王太子は中級の精霊しか持っていない! マジュ国連中の力と同等程度だ!』


マジか!?

どさくさに紛れて聞き流せない事を言わないでよ火精霊ホムラ!!


『王太子とマジュ国連中各自に、魔物が分散して襲っている! このままではいずれ食らいつかれるぞ!』

「嫌なこと言わないで!!」


火精霊ホムラに怒りながら私は考える。

今のままではラファエルに精霊を返せない。

降りて近づこうとしたら、無防備な私に魔物達が一斉に群がってくる。

今の私では魔物を押しとどめられるだけの精霊の力を発揮できるか分からない。

確実に怪我を負うだろう。

かといってここから水精霊イズミに攻撃してもらおうとしたら、私はまた意識を失う可能性がある。

それではラファエルとお兄様が、私を王宮に残す判断をした意味がない。


『近づく』

火精霊ホムラ!?」

『姿を消して近づいても魔物は我の気配を感じ取る。前にしたやり方で注意をこちらに向かせる』

「でもそれじゃ……」

『その間にマジュ国連中に消滅させればいい』

「あ……」


火精霊ホムラの言葉に私は目を見開く。

そっか…

精霊の力を使うわけじゃないから、私に負担はない。


風精霊フウ、主を離れた場所へ』

『はい』


火精霊ホムラ風精霊フウの間で決められ、私の身体は火精霊ホムラの背から離れた。


「え………」


いきなり空中に投げ出された私は、浮遊感を感じながら落ちていく。


「こ、心の準備ぐらいさせなさいよぉぉおおお!!」


叫んだ私は絶対に悪くないはずだ。

凄いスピードで地面に向かっていく私の身体は、地面に激突する寸前で風精霊フウの風によってゆっくりと地面に降ろされた。

………自分でヒモなしバンジーするのと、強制的にヒモなしバンジーさせられるのとでは、天と地ほどの差があると思い知らされた。

森の、ラファエル達が戦闘しているところとは離れた場所に降ろされ、私は座り込み近くの一本の木に手をついて、吐き気と格闘することとなったのだった。

………火精霊ホムラを後で絞めようと思います……


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