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第602話 お転婆王女再び




「………ぇ…」


私はラファエルとお兄様を見送り、朝食を取り終えたあとに気付いた。


「………姫様?」


フィーアが私を呼ぶけれど、私はそれに反応できなかった。

………なんで……

震える手を眺める。


「………ソフィー」

「はい」

「………私は……一体何日眠っていたの……」

「今朝を含めますと8日間です」


ビクッと身体が震えた。

ソフィーは嘘をつかない。

つく必要もない。

それだけあれば、ラファエルがサンチェス国へ来られる。


「………どう、して……」


なんで私は疑問に思わなかったのだろう。

倒れた日の翌日だと思っていた。

だって、みんないつもと変わらなかったから。

お兄様だって。

ラファエルがいる時点で数日眠っていたのだと、何故分からなかったの。


騎士達みんなすぐに私をラファエルの所へ連れて行って!」


壁側に立っている騎士達に言ったけれど、誰も、いやオーフェスが素早く扉の前に立って、通さないようにする。

その他の3人は動かない。

いつの間にアルバートとジェラルドが私の騎士に戻っているのか。

それも疑問に思うべきだった。

ブレイクとドミニクなら、今の私の言葉に戸惑っただろう。


「いけません。レオポルド様に部屋から出るなと言われたはずです」

「貴方は私の騎士でしょう! 私の言うことを聞きなさい!」

「王太子命令です」


ラファエルといい、お兄様といい、どうして私の騎士が私の命を聞かないのよ!

貴方達の主は私でしょう!?


「早くしないとラファエルが危ない!!」

「「「「え………」」」」


私はまた両手を見る。

私の中に眠る力。

間違いない。


「どうして」


なんでこんな事になっているのか。

そんなの、考えるまでもない。

私が、目覚めなかったから、だ。


「ラファエルが自分の精霊を私の回復のために、自分の契約精霊を私に入れてるっ!」

「「「「「「「………!?」」」」」」」

「ラファエルが回収しないまま行ってしまった! 今のラファエルじゃ、魔物に対抗できるか分からないっ!」


私の中から出てラファエルの所へ行って欲しいと願っても、究極精霊の眷属故に、究極精霊の傍にいてしまうと上手く離れられないそうだ。

だからラファエルと触れ合い、帰り道を示さなければラファエルの元へ帰れないらしい。

理屈はよく分からないけれど、私がラファエルの所へ向かわなければいけないという事だけは分かった。

なんでラファエルは回収していかなかったのよっ!!


「早く行かなきゃ、ラファエルがっ……!」


どうしようどうしようどうしよう!

なんで早く気付かなかったのか、という後悔しかない。

いっそもう火精霊ホムラに飛んでもらう?

いや、それはダメだ。

精霊を見ていない兵士がいれば混乱して、犠牲が出るかもしれない。

ラファエル達は馬だよね。

馬……相乗りしてもらわなきゃ私は自分で上手く操れない。

授業で数回乗っただけだし。

………悩んでる場合じゃない!

騎士が動かないんだから仕方ない!!

ラファエルの近くまで火精霊ホムラで行って、人目のないところに降りてもらって、あとは走ればいい!

そうと決まればっ!!

オーフェスが扉の前から動かないから…

よし、バルコニーからだ!!

騎士達に捕まえる前に…


火精霊ホムラ、バルコニーの外に待機! 飛び乗るから!』

『分かった』


火精霊ホムラが待機するのが分かって私は走り出した。


「ソフィア様!?」


勢いよく窓を開けてバルコニーに飛び出し、私は待機していた火精霊ホムラに飛び乗った。

捕まる前に上昇してもらった。


「ソフィア様!! いけません!!」

「何を考えているんですか!!」

「貴方達が私の命を聞かないからでしょ!! ラファエルが傷ついたら一生許せない自信があるわよ!!」

「っ……!」

「貴方達は止める! 私は行く! いつまで経っても平行線で、その間にラファエルに何かあったら許さないから!」


私はそのまま火精霊ホムラに雲の上まで上昇してもらった。


火精霊ホムラごめん、急いで…」


そう願えば、火精霊ホムラは無言で向かってくれた。

………お願いラファエル……無事でいて…


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